RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

ショートショートフィルムフェスティバル@ラフォーレミュージアム原宿 2016年6月11日(土)

二年前とは、随分と開催形式が異なっている。

 

「フェステイバル」と「コンペティション」の要素が強くなり
更には「エンターテインメント」性も加味。

 

開催期間も6月3日~26日と長期に渡り
会場も都内+横浜の計五か所、
随分と規模が拡大している。

 

入場も、ふらりとその場に行けば入れたのが
「Peatix」の事前予約が必須。

 

勿論、当日の入場も受け付けてはいるけれど、
入れる保証はないのと、観易い場所の確保を勘案すれば
予約しておくにこしたことはない。


今回のスケジュールは15:30~17:10と設定されてはいるものの
前者は入場開始の時間、後者は終了の目安。

 

最初MCが有り、終映後にはQ&Aタイムが設定されているので
実際の終了は17:15を少々過ぎるくらい。


先ずは6Fの受付でQRコードを提示し
整理券を受け取る。

 

イメージ 1

 

階段沿いに番号に従って並んで順次入場。


当日のプログラムは”アジアインターナショナルジャパン1”。
上映作品は四本。

 

※以降の評には、たっぷりのネタばれが含まれています。


一本目は中国/香港の〔サンダル〕。
上映時間は16分。

 

ちょっとした諍いをしたカップルが浜辺に辿り着き
女性が転寝をしている間に男性の姿が見えなくなる。

 

『アントニオーニ』の〔情事〕を思い出させる
不穏な雰囲気とBGM。

 

しかし、その後は・・・・。

 

遠くて近い男女の機微を
卑近なエピソードで掬い上げた秀作。


二本目は〔EVERYTIME WE SAY GOODBYE/エヴリタイム・ウィー・セイ・グッドバイ 〕
日本映画で上映時間は16分。

 

末期癌を宣告された妻に、何でも願いを叶えて上げると言った夫に
出された命題は「ツチノコ」の捕獲。

 

夫は真摯な態度で妻の望みに向き合うが・・・・。

 

ツチノコ」が居るところに「ハブ」はいないだろう、とか
仮に捕獲しても賞金は200万円程度だろうとか、
突っ込みどころは満載だけど、
夫婦の会話の独特の間が相当に可笑しい。

 

奇跡は起きず妻は亡くなってしまうのだが
その後の喪失感の描写が素晴らしい。

 

お金をたっぷりかけて制作された「泣かせる」映画は
本作を見習うべきだろう。


三本目はタイから、〔観覧車〕。
上映時間は24分。

 

これが一番考えさせられる。

 

人らしい生活を求めて
一組の母と息子がビルマからの国境を越えタイに入る。

 

しかし、其処は彼女等が望んでいた理想郷では
けしてない。

 

財の偏在は勿論だし、外見や言葉の違いだけで
多くの偏見が生まれる。

 

一見、寓話の様な描写が展開されはしても、
内包される不均衡はあまりにも多き過ぎる。


スペシャル上映として
「第1回Book Shorts アワード受賞作原作」の〔HANA〕。
監督は『岡元雄作』。

 

芥川龍之介』の〔鼻〕を底本としており、
長すぎる鼻を持った僧『禅智内供』が
鼻を短くする施術を試し、実際に一旦は目立たなくなるものの
直ぐに元に戻ってしまう、その間の心の揺らぎを描いた物語を
現代の女子高生に翻案、
貧乳が漢方の効果で一夜にして巨乳になりはするものの・・・・、
との筋立て。

 

コンプレックスは外見そのものが定義するのではなく
あくまでも心の持ちよう、願いが叶っても
また別の悩みが生まれる人間の性をコメディタッチで描く。

 

原作に倣うなら、効能は一夜で元通り、
または夢オチとの帰結も考えられるのに、
本作は敢えてその方向性は採らない、
これはこれで振り切れたエンディングと
ちょっとだけ快哉を叫んでしまった。


何れもが小品ながらそれなりに楽しませてくれる。

 

才能って、こんなことを繰り返しながら
育って行くんだろうと思う。

 

今回上映されている200/6,000の
或いは、選ばれなかった残りの作品の作者の今後にも期待する。

 

もっともっと我々を楽しませてくれ。