RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

Reflection@佐藤美術館 2024年4月20日(土)

多摩美術大学大学院修士課程日本画研究領域二年生展”が正式タイトル。

 

 

計十二名の作品が並び、
一人あて大小合わせて複数点なので、
見ごたえもあり。


『荒井颯子』の古風な日本画の構図や表現の中に
今っぽい人物や思惑が入り込む〔マッチポイント〕。

期待と物憂げな感情がない交ぜになったような空気が漂って来る
『岡千尋』の〔アンビバレント〕。

童話のような世界観を感じる『藤谷なみ』の〔カタルメ〕。


足を止めてじっくりと観たい渇望が湧き上がる作品が幾つか。

標題所の展覧会で久々に
ああ、来て良かった!
と、思わせる展示内容。


会期は~5月2日(日)まで。


マイケル・ケンナ写真展@ヒルサイドフォーラム 2024年4月20日(土)

モノクロームの写真展。

 

写真家は英国人も、被写体の全ては日本の風景や建物。


風景であれば中には鳥が入る作品もありはするが
概ね平原(それも雪一面の)や山海といった
どちらかと言えばシンプルな対象。

が、荒涼とした雪原であっても
画面の中に一本の木がぽつんと、
或いは低い柵が幾つか入ることで
孤独感やたおやかさを超えて迫るものがある。

山や(人造物ではあるが)鳥居を撮った作品からも同様の印象を受ける。

月並みではあるものの、
日本らしい「侘び」「寂び」が感じられる世界観。

それを外国人が表現して見せることに
不思議さと驚きさえ覚えてしまう。


会期は~-5月5日(日)まで。

 

写真集等が販売されているスペースもあり。


異人たち@TOHOシネマズ錦糸町 オリナス 2024年4月21日(日)

封切り三日目。

席数114の【SCREEN5】の入りは三割ほど。

 

 

片岡鶴太郎』はべらんめぇな父親役が、
秋吉久美子』はきっぷの良い母親役がそれぞれ似合っていた。

そんな両親が、十二歳の頃に死に別れたままの姿で
懐かしい浅草の地で暮らしている。

今朝分かれたばかりのような気軽さで「よう!」と声を掛けられてから
主人公は足げく二人のもとに通うことに。
まるで失われた少年時代を取り戻すかのように。

そこでは離婚した妻子のことも忘れ、
昔に戻ったように素直になれた。

しかし日が経つうちに、彼のカラダは衰弱しだし、
母親は「やっぱりねぇ。もう死んだ人間と一緒に居るのは不自然なんだよ」と言い、
別れの日が訪れる。

両親は自分たちが既にして死者であり、未練でこの世に戻されたことを認識。
再び得た楽しい日々ではあるものの、我が子可愛さにそれを手放すことを決断。

三人で囲む「今半」での「すき焼き」の湯気を前にして、両親の姿は消えて行く。
「行かないで!!」と泣きながら訴える姿は哀切極まりなく、
ここで落涙しない人間はおらぬだろう。
大林宣彦』らしい叙情的なシーン。

主人公にとっては、自身の寿命を引き換えにしても、全うしたい懐かしい想いなのだ。

にもかかわらず、彼の衰弱は進む一方。なぜならば・・・・と、
曰く付きのラストのシークエンスへ突入。
これをもっと巧く創っていれば、どんなに素晴らしい作品になっていたことか。

元々の企画であった{ホラー}の残滓ともされているが、
監督の長編デビュー作(制作も兼ねる)は〔HOUSE ハウス(1977年)〕だったことを忘れてはならぬ。

これが〔異人たちとの夏(1988年)〕。


では同じ『山田太一』の原作を
イギリスを舞台に移し撮られた本作はどうか?

〔生きる LIVING(2022年)〕と同様のケースで、先作は事前の不安をよそに、
世評の高さは周知の通り。個人的にも高めの評点。


ただ今回、監督の『アンドリュー・ヘイ』は主人公をゲイにするとの
大きな改変を加えている。

これにより、都会に一人住む男の
孤独や寂寥が際立ち伝わるように。

それ以外のプロットはほぼほぼ前作通りも、
やはり両親との別れのシーンでは日本的情緒を加味した表現に軍配。
もっともこれは、自分が日本人だからかもしれないが。


その後の展開もやや{ファンタジー}によったもの。

人を愛することを知らずに育った男が、
通過儀礼を経て愛することを覚えた、との。

が、その相手が、実態を持たぬ存在なのは
それで良いのか?と、疑問に感じるところ。


評価は、☆五点満点で☆☆☆★。

 

日本に比べると、
キスをする、抱き合う等のフィジカルな愛情表現が濃密な西洋との認識。

なのに、本作よりも、「大林版」で描かれた両親の方に、
愛情の深みを感じてしまうのは
一つ同郷なだけが理由ではない気がする。

 

OKETA COLLECTION 2024「Golden Memories」@スパイラルガーデン 2024年4月20日(土)


本展もはや六回目。

毎年この時期に、自身のコレクションを無料で披露してくれるのは、
なんと有難いことか。

 

 

展示作家は二十ほども、
アンティークチェアや白磁信楽等もあり
収集欲の広さはうかがえる。


気になる作家は『杉山日向子』で
経歴を確認すれば「卒展」等で既見のハズも
その時はあまり印象に残っていないよう。

が、今回四点を纏めて観て、
描かれている女性が同じ面立ちに思え、
Webで検索をすれば、全て「自画像」なのね。

セルフポートレートで各種のシチュエーションを演じるのはあるけれど
それを絵画で展開するとの変換。
これは面白い。


もう一つは『森本啓太』の〔Evening Diner〕。

エドワード・ホッパー』の〔ナイトホークス〕の孤独感とは対極にあるような、
日本のファミレスらしい喧騒のアンサー。

画の前で、くくくっと笑い出すのを止められない。

 

会期は明日が最終日。

http://oketacollection.com/

リンダはチキンがたべたい!@チネチッタ川崎 2024年4月14日(日)

封切り三日目。

席数154の【CINE9】の入りは二割ほど。

 

 

『リンダ』は母親の『ポレット』と郊外の大規模団地に住む活発な女の子。
父親は彼女が一歳の時に、食事中に突然亡くなり、
記憶はほぼほぼ無いに等しい。

が、その時の、父親が作ってくれた夕食だけはしっかり覚えている。


ある日、大事な指輪を失くしたと母親から疑いを掛けられるも、
結局は誤解とわかり、お詫びにと件のメニュー《パプリカ・チキン》をリクエスト。

ただ、約束の日は全土的なストライキでお店は全てお休み。
母娘はチキンを手に入れるために雨の中を右往左往。
果たして『リンダ』は思い出の《パプリカ・チキン》を食べることができるのか。


二人が住むのは、停電や漏水が頻繁に起こる古びた団地。
オマケに住人は移民も含めた多人種に及び
イマイマのフランス映画でも描かれる典型例。

母親は暮らしに余裕がなく、ついつい娘に辛く当たってしまう。
これも現代的な問題の一つ。

もっとも、物語りの発端である広範なストライキ
日本では今では見ることもなくなったが、
彼の地ではしっかり残っている。

こうした社会的な問題が、愉快な画面から透けて見えるのが特徴の一つ。


もう一つの特色は、太い線にべったりと単色で塗りつぶされた人物の絵柄。
精緻なリアルさを善しとするイマドキの日本のアニメとは対極。

にもかかわらず、表情は豊かで表現の躍動感も相当のもの。
全体を貫く{スラップスティック}なトーンにも合っている。

また、なんとしてもチキンを食べたい『リンダ』が繰り出す
子供らしい残酷さには驚きもする。


本来なら日延べをすれば良いのに、
娘の「どうしても今日食べたい。そう約束した」との強い意志に
母親は真摯に向き合う。

普段なら軽く一蹴するだろうに、
今回会議りは指輪を失くしたとの疑いで手を上げてしまったことや、
日頃の自身の言動の贖罪の面もある間も知れない。

勿論、父親を懐かしむ娘に応えたいとの気持ちも有ったろう。

結果引き起こされる騒動は、
警察を呼び寄せ、しかし地域住人も協力することで奇跡を生む。
その場面がなんともすがすがしい。


評価は、☆五点満点で☆☆☆★。


外へと飛び出した大騒ぎは団地の中へと収斂し、
新たな関係性も幾つか芽生える。

子供らしい純真さと、
それに報いる親の愛情が産んだ美しい寓話。

 

プリシラ@TOHOシネマズ日本橋 2024年4月13日(土)

封切り二日目。

席数143の【SCREEN9】の入りは四割ほど。

 

 

現時点の評価は
IMDb:6.5
Metascore:79
個人的には一般人評価の「IMDb」より
評論家筋の「Metascore」を偏重の方針。

とは言え「IMDb」も7.0以上は善し
(「Metascore」は70以上)の基準としているので
本作はそれなりに事前期待を持っていた。

観終われば、
幼少期から一人の女性を演じきった『ケイリー・スピーニー』は
素晴らしいの一言に尽きはする。


プリシラ』の著作〔私のエルヴィス〕を底本とした、
ソフィア・コッポラ』による脚本を含めた監督作。

彼女の作品ではなにがしかの「喪失」が描かれることが多いが、
それは今回とて例外ではなし。


プリシラケイリー・スピーニー)』14歳、
エルヴィス・プレスリー(ジェイコブ・エロルディ)』24歳の出会いののち
二年後に始まる同居生活(結婚は八年後)は
傍目からはオママゴトのよう。

プレスリー』はそれなりの年齢も
世間知らずなのは〔エルヴィス(2017年)〕でも描かれた通り。

一方の『プリシラ』も憧れが昂じてそのまま夫婦になったのが透けて見え。

象徴的なのが、彼が彼女にドレスを誂える場面。
「メンフィスマフィア」を引き連れ店に繰り出し、
とっかえひっかえ試着させるのは「バービー人形」への着せ替えを楽しむのと近似。

服の色にとどまらず、髪の毛の色、アイメイクにまで細かく指示を出す。

にもかかわらず、男女が一つのベッドに同衾しながら
就寝時には睡眠薬を服用。
「時が来るまで」と一切手を出すこともなく数年が過ぎるとの異様な日常。


そうした二人の日々を、監督は醒めた眼で見つめ、
起伏の無い平板な語り口で描写。

子まで成した結婚生活は、結局は六年弱で破綻も、
そのときの涙ですら、どこか他人事の悲しさのように感じさせてしまう。


離別の要因は余人にはうかがい知れぬが、
こと音楽には革新的だった『プレスリー』も
家族関係については古風な
(男は外で女は家。日常生活で女は男に従うべし、との)考え方から、
プリシラ』が長ずる連れ自我も芽生え
外の世界にも自身の居場所を求めるようになったこともあるのでは。


評価は、☆五点満点で☆☆☆★。


断ち切られたような映画の終焉の後では、
繰り返される薬の常用と、仕事のストレス、親族やマネージャーへの依存が
世紀のスーパースターを早世させたのは周知の通り。

対して『プリシラ』は、抑圧から解き放たれたように、
その後は女優としてもビジネス面でも成功を収める。

離婚は初恋の終わりともに、彼女の自立の始まりでもあったのだ。

 

TDC 2024@ギンザ・グラフィック・ギャラリー 2024年4月6日(土)

”TOKYO TYPE DIRECTORS CLUB EXHIBITION 2024” と書かれている。

 

恒例の企画も、
例年以上に外国の人の作品が多い印象。

また、自分が見たり聞いたりした作品が圧倒的に少ないのも毎度ながら、
実際に行った展覧会のポスターが五点ほどしかないとの体験不足。

何時ものことながら
過去一年の行動を猛省する機会でもある


会期は~5月15日(水)まで。