RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

脳天パラダイス@109シネマズ川崎  2020年11月23日(月)

封切り四日目。

席数89の【シアター9】の入りは二割ほど。

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父親『修次(いとうせいこう)』のギャンブル癖やら投資の失敗のため
祖父母が残した都内の壮大な屋敷を手放すことになってしまった『笹谷』家。

その家で過ごす最後の日、娘の『あかね(小川未祐)』は半ば自棄になり
「パーティを開きます。誰でも来て下さい」とツイートする。

と、それを真に受けた有象無象の人達が集まり出し、
邸内は人で溢れ返り、カオスな状態に。

そこで起こることは支離滅裂とでも表現すればよいか。


つい最近に起きた事件を取り込んだり、
日本古来の祭りからミュージカルに展開させたり、
或いは『フランク・オズ』監督作品のSFホラー映画をパロったり、と
も~やりたい放題。

大まかな筋立てに沿って伏線をバラ撒き、
それを回収しながら収斂させて行く。

しかし、あまりにも風呂敷が広がり過ぎ、
脈絡の無いエピソードを牽強付会的に繋げて行くので、
付いて行くのにあっぷあっぷ、
鑑賞者の脳内は一過性の酸欠状態に。
頭がふらふらになってしまう。

お馬鹿を演じる有名俳優達に
感心を通り越し半ば呆れながら。


評価は、☆五点満点で☆☆☆★。


スクリーンを注視しながら過去の二つの映画作品が脳裏をよぎる。
何れもテイストは本作に共通、とりわけそのぶっ飛びさ加減に於いて。

一つは『大林宣彦』の〔HOUSE ハウス(1977年)〕。
そのサイケな映像に目がちかちかした。


もう一つは『長嶺高文』の〔ヘリウッド(1982年)〕。
「@シネマ・プラセット」で観た際に
あまりの無内容に頭がくらくらした。

ストーリーはあってないようなもの。
有名人も大挙出演し、ミュージカルやらロックやら
SFやらスカトロやらと脈絡のないエピソードがてんこ盛りに繰り出される。

もっとも四十年近く経った今でも、
ディテールをかなり思い出せ、
ある種トラウマの如く記憶に残る一本。


おそらく今回も、それに近い位置付けになろうかと。
折りにふれ、その馬鹿々々しさが甦って来るだろう。

泣く子はいねぇが@109シネマズ川崎  2020年11月22日(日)

封切り三日目。

席数118の【シアター5】の入りは三割ほど。

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なんて怖い風習なんだろう、「なまはげ」。
2~3歳頃にこんな恐ろしい目に遭えば
絶対にトラウマになるし、知恵が付く迄は
親の言いつけに背こうとは思わないのは間違いなし。

それでも直近では、少子化や担い手の減少、
正月の過ごし方の多様化で廃れる方向性にあるらしい。

本作での、主人公の所業に対する地域住民の反応は
傍目からはかなり過剰に見えるけど、
そういったことが背景にあるのなら、
神経質になるのも判らんでもない。


にしても主人公の妻の『ことね(吉岡里帆)』は
どうしてこうもイラついているのだろう。

娘が生まれたばかりで、夜泣きや授乳で疲れ切っているのか。

それとも病気の父親の加減が悪い、または
家業のスポーツ用品店の経営も思わしくない?

決定的なのは入り婿である『たすく(仲野太賀)』が
何時までも子供っぽく、おまけに酒乱の気があることか。


そんな『たすく』が「なまはげ」の最中にやらかしてしまう。

泥酔し、すっぽんぽんになって町をうろつき、
それが間の悪いことに全国中継で放送される。

満天下にちんちんを晒してしまったわけだが、
それが粗末なモノだったとか、長大だったかは問題とされず、
ただ披露してしまったことで各所からのクレームの嵐。

妻とは離婚する羽目になり、
追われるように東京へと逃げ出す。


別れた妻や娘のことを気に掛けることは一丁前も、
それを支える心構えすらまるっきりできておらず。

いっぱしの男なら、養育費を払うため
そこで粉骨して働くだろうが、それもせず
たた安穏と日々を流すだけ。

とことん煮え切らない性格に
鑑賞者はただひたすらやきもきするばかり。


そんな折り、『ことね』の近況を聞き
矢も楯もたまらず故郷へ向かう深夜バスに乗る。

自身が変わることを周囲に認めさせ、
(元の)妻子と再びよりを戻すため。

しかしその先で待ち受けていたのは、
二年半を過ぎてなお、主人公を寛容しない田舎の空気。


ではあるものの、観ている側からすれば
よくまぁこんなしょ~もない人物を造形したな、と。

欠片も共感できぬほどの情けない行動の数々。

金を稼ごうとする手段すら安直で
いっぱしの大人とはとてもじゃないが思えない。


でも待てよと中途から思い直す。
我々誰しもの中に、多かれ少なかれ『たすく』的な側面は存在する。
本作ではそれを意図的に極大化して見せているだけで。

一歩踏み誤れば同じ隘路に入り込み、
身動きが取れなくなってしまう。

そこから抜け出すにはどうすれば良いか。いや
どんなきっかけが必要か。


本作では最後までそれが明示されることはない。

しかし最後のシークエンスで、数少ない応援者のチカラを借り
変わるための仄かな明かりを見出す主人公が描かれる。

もっともそれも、あまり潔い姿ではないけれど。


評価は、☆五点満点で☆☆☆★。


お馴染みのご当地映画にしては珍しく、そこで暮らす人を礼賛し
全肯定する姿勢でないのは逆に好感が持てる。

田舎って、それほど住み良い場所じゃあないよね。

 

タイトル、拒絶@109シネマズ川崎  2020年11月21日(土)

封切り八日目。

席数72の【シアター10】の入りは九割ほどと盛況。

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大卒なのに就活で落ち続け、
何を思ったからデリヘル嬢に志願。

にもかかわらず、初出勤でキモイオヤジが迫るアップ顔に
「とってもムリ~」と逃げ出し、
結果、同事務所でスタッフとして働く『カノウ(伊藤沙莉)』。

そこは、高圧的な店長が仕切り、
年齢も過去も様々な女性達が出入りする場所。

金への欲と人気ランクへの怨嗟が渦巻き、
混沌とした様相を呈している。


監督の『山田佳奈』は舞台出身とのことで
本作も2013年の初演モノの映画化と聞く。
なるほど、冒頭からそれっぽい造り。

実演では傑作と評されても、スクリーンに定着させると
凡作以下に成り下がるケースが多い中、
同様の轍を踏まねば良いがと
観る側の心中はあまり穏やかならず。


そこで働く彼女等のキャラは夫々立ち、
一方で背景や巻き起こる嫉妬はありがち。

男性従業員との関係性も含めある意味ステレオタイプ
いざこざが繰り広げられる。

尺の関係もあろうか、個々人を深く掘り下げるエピソードは過少で
なかなかに感情移入しづらい流れ。

終盤に向けても、多くの関係者にケリをつけさせようと
かなりムリをしてシーンを押し込んだ感があり。


もっとも今回を足を運んだ目的は
主演の『伊藤沙莉』を観ることにあり。

直近公開の〔ホテルローヤル〕ではJKを演じていたけれど、
今回は等身大により近い年齢の役柄で不自然さはない。

共に{グランドホテル形式}な展開は
単なる偶然かと独りほくそ笑む。

冒頭のシーンで彼女の腹が割れていることに先ずは驚き、
子役出身ながら多くの舞台人と交わる中で
きちんと身体を鍛えた結果だろうかと、勝手に思ったり。

微妙な立ち位置の狂言廻しをきちっと演じ切り
最後の泣きのシーン以外は満点の出来だったと
個人的な感慨。


評価は、☆五点満点で☆☆☆★。


もう片方の主要な登場人物『マヒル』を演じた『恒松祐里』も
サクラダリセット〕の頃よりは格段に良くなっているし
かなりの存在感。

しかしラストの「どっか~ん」の科白は
〔告白〕での『松たかこ』にはまだまだ及ばない(笑)。

 

石田桐庵 近作展@Bunkamura Box Gallery 2020年11月14日(土)

会期は11月10日(火)~16日(月)と短めも
当該施設ではありがちなハナシ。

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サブタイトルに「風の光 風の色」ともある様に
淡い色調の作品が並ぶ。

歴史に題を取った作品が多く、基本〔平家物語〕ねと観ていると、
中には〔太閤記〕もあったりで、おやおやと思ったり。


即売を兼ねており、何枚かには赤丸シール。

ドクター・デスの遺産@TOHOシネマズ川崎  2020年11月15日(日)

封切り三日目。

席数150の【SCREEN4】の入りは八割ほど。

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ストーリーの流れを追い、画面を注視しながらも、
原作アリものを映像化することの意味についてあらためて考える。

メッセージ性を強く表現したいとか、
よりスペクタクル感を出したいとかあるだろうけれど
本作の意図は那辺に在ったか。

安楽死の是非を扱いつつ、
犯人を追い詰める刑事の活躍が主線と思われるも
その何れもが中途半端にしか描けていない残念さ。


安楽死云々のハナシでは、嘗て『手塚治虫』が〔ブラック・ジャック〕に
ドクター・キリコ』を登場させ世に問うたのが、かなり早い時点と認識。

また本作中にも触れられているモデルとなった実在の医師もおり、
それはアメリカの『ジャック・ケヴォーキアン』だとされ、
彼は実際に130人を安楽死させている、と。

主人公の娘が腎臓に疾患を抱えている設定で、
エピソードを補強しようと試みるのだが
それがどうにも弱く、犯人のシリアルキラーっぷりのみが際立ってしまい
どうにもいけない。

世に問う、等のレベルにはまるっきり達しておらず、議論も深まらずで、
いたずらに流れに埋没してしまっている。


刑事の活躍についても同様。

前半~中盤迄は、どんでん返しや、
普段我々が持っている固定概念を逆手に取った仕掛けもあり、
ほうなかなかと感心していたものの、
後半の描き方の体たらくと言ったら・・・・。
思わず口があんぐりと開いてしまう。

文明の利器の使用とか、科学捜査とかのイマイマの技術を
一体どこに置き忘れてしまったのよと噴飯し、
それでいて、相棒の勘が冴えに冴える有り得ない描写。

ビブリア古書堂の事件手帖〕を想起させる駄目さ加減で、
観客の力量をなめてかかっているとしか思えず。


評価は、☆五点満点で☆☆☆。


新たなバディものをシリーズ化するための名刺代わりの一本を
通例とは異なり先に劇場公開の思惑かとも思ったがどうやら違うよう。

『中山七里』原作による〔刑事犬養隼人シリーズ〕ではこれが四作目に当たるし、
加えて本作の不出来さを勘案すれば、とってもムリだろうと(勝手に)思ってしまう。

さくら@TOHOシネマズ渋谷  2020年11月14日(土)

封切り二日目。

席数154の【SCREEN1】の入りは八割ほど。

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タイトルの「さくら」は何かと思ったら、
舞台となる家で飼われている犬(牝)の名前。

このペットが鎹となり、
一緒にいる意味を喪失した家族が
再生するまでを描く。


物語りは静かに進行。

両親の馴れ初めや、何処にでもある家庭なりの儀式の成り立ち、
または『さくら』が貰われて来た経緯を挟み
『長谷川』家の状況が描かれる。

尺も半分を過ぎる迄は、何処にドラマが生み出されるのかさっぱり分からず、
おいおいこの先どうなるんだいとかなり気を揉んでしまう。
とりわけ、夫婦の昔も含め兄弟妹が幼い頃は、何処にでもありがちな一家の様子。

が、長ずるに連れ、思春期らしい恋愛が絡みだすと
そこはかとない不協和が露呈。

中でも極度なブラコンの妹『美貴』の
長男『一』への態度はかなり強烈な描写。


何となくの居心地の悪さを覚えながら注視していると、そこで事件が起こり
一家は解体する。

「たら」「れば」は正しくないものの、行き過ぎた情愛が招いた悲劇は
防ごうと思えば何とかなっただけにやりきれない思い。


しかしクロニクルとして見た時に、
すとんと腹落ちがしないのは確か。

そもそも三人の仲が異常に良すぎることや
親子関係も随分とあけすけなのがその背景にありそう。

特に〔ふしぎなメルモ〕宜しく、幼い子等に性教育を施す場面は
その最たるところ。

とっても一筋縄では行かない一家の描かれ方に
浮遊感があって仕方がない。


評価は、☆五点満点で☆☆☆★。


主要な登場人物である三人、
長男-次男-長女を演じた
吉沢亮』-『北村匠海』-『小松菜奈』の実年齢は
夫々26歳-23歳-24歳。

役柄の上でのことと割り切ろうと頭で考えはするものの、
小松菜奈』の存在がどうにも分かちがたい違和感。
ちょっと大人び過ぎてるのよね、最年長にしか見えんのだけど。

個人的にはとりわけ好きな女優さんも
本作に限っては、もっと年下の人をアサインした方が良かったかも。

もっとも、彼女が漂わせた魔性な香りは捨てがたいものがあり、
正解はどうだったのかは判らないのが悩ましいところ。

ホテルローヤル@TOHOシネマズ渋谷  2020年11月14日(土)

封切り二日目。

席数197の【SCREEN1】の入りは五割ほど。

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子供に親は選べないし、ましてや
親の職業は尚更。

貴賤はないハズなのに
幼い頃は「ラブホの娘」とからかわれ、
長じてからは好きでもないのに手伝いに駆り出される。

しかし、主人公が育ったのはその家業のお陰だし、
美大への進学を目指せたのも同様。

両親がその事業を始めたのも
それなりの理由があってのこと。

娘にとっては一種、揺りかごの様な場所であったことに
何時気づくのか、または終いまで気づかぬのかかが一つのテーマ。


釧路湿原の真ん前に建つ「ホテルローヤル」は
客室数は十と小体な造り。

休憩3,800円、宿泊5,000円と価格設定もリーズナブル。
地元密着型のラブホで地域の人にもそれなりに愛されている。

元々は経営者夫婦と二人の従業員で始めたものの、
今では夫の方は商売に身が入らず。
妻は孤軍奮闘な毎日。

しかし所詮は男と女の愛欲が渦巻く場所、
一歩中に入ればそこは異世界

そんなこんなで起きる幾つかの事件。

夫婦間の諍いであったり、従業員の身に降りかかる問題であったり、
利用客の家族関係であったり。

カメラはほぼほぼホテル内から出ることはなく、
それを傍目からとらえ切る。
所謂{グランドホテル}ものの典型例、
但しラブホだけど(笑)。


狂言廻しは娘の『雅代(波瑠)』も
本来の主人公はホテルそのもの。

そこに集まる人々の品性が
さらけ出される場として。

幾つかの山場は用意され、
それに翻弄される『雅代』は
ただただ流されてその場に居るだけ、
主体を持たぬ付属物のような存在。

非常時にもおろおろとするばかりで、
生来の期の弱さが露呈する。

しかしあることを契機に
彼女は決断をするのだが
その時になって初めて気づくのだ、
あれほど嫌っていたラブホが
実は自身に取ってのよすがの場であったことを。


評価は、☆五点満点で☆☆☆★。


エンドロールで流れる『柴田まゆみ』による〔白いページの中に〕は
同時代の曲。
往時はかなりのお気に入りで、ヘビロテで聞いていた記憶。

今回改めて耳にすれば、その歌詞が本編の内容とあまりにもピタリ。
制作者サイドはよく掘り起こしてきたものだと、そのセンスに拍手。