RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

Rich BLACK Exhibition@Bunkamura Gallery 2021年2月23日(火)

ギャラリー内は、そのタイトルが象徴するように黒色が溢れ、
嘗て無いほどに、ほぼほぼ同色で彩られた空間と化している。

平面も黒、立体も黒。
よくまあここまで徹底し集めて来たものだと、
先ずはその方針に感心。

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一方でそれを裏切る様に、
来場者は過少だし、明24日(水)が会期最終にもかかわらず、
即売の赤丸シールが付されている作品は過少。

 

どうしても{版画}が中心の展示になるのが
その背景にあるのかもしれんが。

個人的には『釣谷幸輝』や『北川健次』の世界感は好きなのだけど。

ベイビーティース@チネチッタ川崎  2021年2月21日(日)

封切り三日目。

席数284の【CINE5】の入りは一割ほど。

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タイトルの「BABYTEETH」は「乳歯」の意。
フライヤーのビジュアルや予告編の作りからも、
本作はイニシエーションを経ての一少女の成長譚に違いないと思って観始めると
手痛いしっぺ返しを喰らう。


ストレートプレイからの映画化と聞く。

主要な登場人物は過少。
また各人のキャラクターは、相当重層的に練り込まれている。


主人公の『ミラ(エリザ・スカンレン)』が駅のホームで
ドラッグの売人『モーゼス(トビー・ウォレス)』と遭遇する場面から
舞台の幕は開く。

有り勝ちなボーイ・ミーツ・ガールのエピソードもその後の成り行きは、
かなり捻りの効いた連続。

そしてオープニングのこの場面で既に、
彼女の命運は示唆されているのだが、
鑑賞者の側は後々でなければそのことには気付かない。


『ミラ』は私立の女子校に通い、コンクールに出るほどの
バイオリンの腕前。
しかし所謂、深窓の令嬢とは一線を画す性格付け。
とりわけ十六歳を過ぎて尚、乳歯が残っているとの設定は印象的。

父親は精神科医であり、元ピアニストの母親は
その患者でもあるとの曰く付きの関係。

何故母親が精神を病んでしまったのかはおいおい語られるも、
それは直截的な表現ではなく、あくまでも過去の心情を吐露する形に仮託。

娘を溺愛する父親は、エキセントリックな妻には複雑な感情を持ちつつ、
根底には分かち難い愛情が。


『モーゼス』がなぜ売人に身を持ち崩したのかは判らぬも、
肉親への、特に歳の離れた弟への思いにはひとかたならぬものが。

一方で一宿一飯の恩義になった『ミラ』の家に盗みに入るほど
モラルは崩壊しており、それは自身もドラッグを常用している故か。


『ミラ』は一目で『モーゼス』に好意を持ち、ましてやこれが
俗に言う初恋。一瞬にして舞い上がる。

彼女のありのままを受け入れる『モーゼス』だが、
それは果たして愛情によるものか打算なのかは判らない。

が、この出会いによって確実に変わったのは、
少女よりも寧ろ青年の側。

捻れた形での成長の物語りとして結実する。


評価は、☆五点満点で☆☆☆★。


遣り切れなさの残るラストのシークエンスも、
その前段として幾つもの希望は散りばめられている。

新たに生まれいずる命、才能を受け継ぐ存在。

そして何よりも『モーゼス』の変化こそが
最大の遺産なのに違いない。

 

 

あの頃。@TOHOシネマズ日本橋 2021年2月20日(土)

封切り二日目。

席数290の【SCREEN8】の入りは三割ほど。

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てっきり映画オリジナルかと思っていたら
コミックエッセイの原作ありモノだったのね。

著者は『劔樹人』で、本作で『松坂桃李』演じる主人公と同名。

要は作者の体験を基にした自伝的な一本である、と。


ベーシストとしてのバンド活動は上手く行かず、
バイトに明け暮れながら日々を過ごす主人公が
たまたま『松浦亜弥』のMVを見たことから『ハロプロ』に入れ込み
知り合った数人の仲間たちと下らなくも素晴らしい一時期を過ごす。

しかしそれも人生の中では一過性の輝き。
やがて彼等は離れ離れになり・・・・、との
絵に描いた様な(いや、エッセイに書いた様な?)青春クロニクル。


気弱な『劔』を始めとし、
彼以外の五人(のちに六人)の仲間のキャラは相当に立っている。

中でも自身を一番真っ当な人間だと自己肯定し、
時に他の構成員を見下し攻撃的になる『コズミン』は特に。

それをイマイマ乗りに乗っている『仲野太賀』が演じるのだが、
口だけは大きく、それでいて度胸は無い俗物的表現が抜群で、
直近の〔すばらしき世界〕でも感じたことだけど
上手いなと唸ってしまう。


愛すべきヲタ達が繰り広げるのは
相当に濃く、また笑いに満ち溢れるエピソードの数々。

特にそこにリアルな恋愛模様が絡んで来ると
カロリーは一段とヒートアップ。

まぁ過去の同年代だった頃の自分と引き比べてみても、
同じ趣味で集まる同志でも、そんな葛藤はあったとの記憶。

時代が違っても、近しい世代が集まると
似たことを繰り返す世の習いが描かれているとも言えようか。


評価は、☆満点で☆☆☆★。


一方で気になるのは、挿話間の繋がりがかなりぎくしゃくしている点。
加えて全体的に平板な印象。
エッヂが立っておらず、漫然と流れており、ただこれは
その原作の形式に拠る面が大きいのでは、と。

脚本の『冨永昌敬』は
やはり{青春グラフィティ}モノの〔素敵なダイナマイトスキャンダル(2018)〕の
監督・脚本をしていたと記憶。

原作のセンセーショナルさはさておき、
個人的には同作の語り口の良さに軍配を上げるのだが。

 

第13回恵比寿映像祭@東京都写真美術館 2021年2月13日(土)

今回のタイトルは”映像の気持ち”。
展示も常よりも映像に寄せた内容となっている。

会期は2月5日(金)~21日(日)も、

前日にWebサイトをチェックしていたら
事前予約が必要なことが判明。

入場は一時間タームで
滞在可能時間は二時間まで。

実際の展示もそれを勘案してか、
短尺の作品が多かったな、が印象。

なにはともあれ、一番早い時間を指定し、
10時ちょっと前に着くと既に八人が並んでいる。

単位当たりの入場者数は判然としないけど、
何とも熱心なことだなぁ。

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【3F】で先ず出迎えるのは
リュミエール兄弟』の作品集。

電車が駅に着いたり、工場から人が出て来る情景を写した映像を繋ぎ合わせた
最早お馴染みのもの。

今となっては変哲もないけれど、当時の人々の驚きは
いか程のものだったか。

映像の原点を示すにはぴったりの展示。


その真逆に在るのが【2F】の
『赤松正行+ARARTプロジェクト』。

入場時にiPhoneが貸し出され、
それを作品にかざすとディスプレにはARによる画像が映し出される。

花が開いて萎れる迄の過程を15秒に纏めたものだったり
伝説の登場人物が動くものだったりと、随分と楽しい。

何もないはずの天井空間にカメラを向ければ
鯨や飛行船が浮遊していたり。


やはり【3F】に展示されている
『シシヤマザキ』のアニメーションも面白い。

自身の動きをトレースし、水彩画風に仕上げており
タイトルの《とにかくなにかをはじめよう》とは裏腹に
軽い脱力感あえ漂うかも。


興味の向く展示だけをゆっくり観て
ざっと一時間弱ほどの滞在時間。


後で気付いたんだけど【1Fホール】では
有料で『湯浅政明』の〔マインド・ゲーム〕等が上映されてたのね。

時間が合えば、鑑賞したいものだったが・・・・。

SIX ARTISTS -夢の中の夢-@Bunkamura Gallery 2021年2月13日(土)

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タイトル通り、計六名の作品が並ぶ
即売を兼ねた展覧会。

会期は~2月14日(日) と終了間近も
赤丸シールが付いているものは過少。


中でも『岡本東子』や『蒼野甘夏』の作風は好きな方向性。

もっとも、女性が描かれており、画中の彼女等の面立ちが好ましければ
たいがいはそう感じるのだが。

もっとも微妙な線の揺らぎで、なんとなくしっくりと来ないケースの方が多く、
今回の二人が共に自分の嗜好にはぴったりなのはなかなかに稀。

両名は、名前にも記憶があるので、プロフィールに書かれている内容、
特に受賞歴や出展歴と併せて過去の記憶を脳内検索するのだが、
おや、こんな感じだったかしら?と。

加齢のせいか、ほんの数年前の視覚ですら、
もはや怪しくなって来ているかも(笑)。

ファーストラヴ@TOHOシネマズ川崎  2021年2月11日(木)

本日初日。

席数158の【SCREEN3】は四割ほどの入り。

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女子大生が父親を刺殺する事件が都内で発生。

容姿に優れた娘はテレビ局のアナウンサー志望であり、
父親は美大の教授且つ売れっ子の画家であったことから
事件はセンセーショナルな扱いに。

加えて、捜査段階で、殺害を認めているにもかかわらず
「動機はそちらで見つけてください」などと投げやりな態度を取ったことも
それに拍車を掛ける。


一方、臨床心理士の『真壁由紀(北川景子)』の元には
被疑者の『聖山環菜(芳根京子)』に取材し書籍に纏めて欲しいとの依頼が。

国選弁護人である『庵野迦葉(中村倫也)』が
たまたま義弟であったことから情報を交換しながら接見を重ねるも
彼女の供述はころころと変わり、
奥に潜む闇の深さが顕に。

『環菜』の心を解きほぐし、事件の真相に
二人は辿り着くことができるのか、が主旋律。


ただ例によって予告編は
やや観客をミスリードするよう、編集されていたかも。

見た限りでは、サイコサスペンスに位置付けられようかと鑑賞に臨んだのだが、
実際の展開は正当なミステリー。

それも、伏線は周到に張り巡らさせ、
謎が解き明かされて行く流れはスリリング且つ惚れ惚れとする出来で
観終わった後に不満は微塵も残らず。


主人公の『由紀』にも苦い体験があり、
時として悪夢を見、記憶が甦る度に過換気を起こしてしまうのだが、
それが今回の事件に立ち向かうモチベーションになるのは何とも皮肉。

ただ、次第に炙り出されて来る複数の家族が内包する病理の全てが
ペドフィリアに収斂してしまうのは正直怯んでしまう。

また『環菜』に対して、
自身の過去に重ね合わせることで過度に入れ込み過ぎる点や、
自身で導いた結論を強引に開陳する態度は、
心理士として正しいのかと首を傾げる描写もありはしたのだが。


現代社会が孕む病理を浮き上がらせつつ、
日本に特有の司法制度も鋭く突く原作者の姿勢には共感。

特に殺意の有無と言う、本人にしか、
いや、時とすれば本人にも判らぬ心理が
心象の良し悪しで結論付けられるのは
何とも理解に苦しむ点。

「疑わしきは被告人の利益に」が
大原則ではなかったかと改めて思ってしまうのだ。

真実を解き明かしたい側と量刑を決めたい側の相克は
何処まで行っても、埋まることのない平行線。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。


それにしても本作での『北川景子』の美しさは出色。

あんな顔を間近で見せられ協力を要請されたら、
たいていの男どもはこくこくと
一も二もなく頷いてしまうに違いない。

演技の面でも、過去作から一段抜けた仕上がりだし。

すばらしき世界@TOHOシネマズ川崎  2021年2月11日(木)

本日初日。

席数142の【SCREEN1】の入りは三割ほど。

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佐木隆三』と言えば既に物故者ではあるものの
ノンフィクション小説の泰斗。

ルポルタージュを基に人物像を膨らませ
スリリングな展開も堂に入ったもので
自分も何冊かを読んでいる。

本編はその中の〔身分帳〕を原作にしていると聞くが
刊行は1990年。

暴対法や各地の条例は以降のことながら、
作中ではそれらに関連する表現も見られ、
監督・脚本の『西川美和』がお話を創り込む過程で適宜取り入れたのだろうかと。

主人公の言動を変える要素として上手く機能もしており、
何れにしても〔ディア・ドクター〕しかり〔夢売るふたり〕しかり、
社会から外れた人物をモチーフにさせると
絶品の冴えを見せるのは間違いのないところ。


殺人罪による十三年の刑期を終え出所した『三上(役所広司)』が
今度こそは真っ当に生きようと荒波に揉まれながらも
自立に向け奮闘する姿を描く。

しかし、それを阻むのは、世間の目や法制度も当然ながら、
当人のあまりにも真っ直ぐな気性、とりわけ不正義を目にし頭に血が上った時に
思わず手が出てしまう喧嘩早さも大きい。

年齢の割にはなまじ腕っぷしが強いものだから
過剰に反応してしまうことでの反作用。


一方で彼の裏表のない性格に好感を持ち、
何くれとなく世話を焼く何人かも登場。

彼等・彼女等は一服の清涼剤的位置付けで、
その存在が無ければ、物語りは随分と殺伐とした流れになってしまったろう。


中でも映像作家の『津乃田(仲野太賀)』の立ち位置はとりわけ出色。

『三上』から提供された資料を基に、
主人公の生い立ちや性格を要領良く紹介する
ある種狂言回し的役割も負わされてはいるのだが、
その語り口の仕方がどうにも巧いなぁ、流石『西川美和』と
舌を巻いてしまう具合。

周囲の善意に解きほぐされ、頑な主人公の心根が僅かずつ変化する、
その過程でメルクマーク的に挿入されるエピソードの数々もまた磨き抜かれて素晴らしい。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。


とは言え、このエンディングは、賛否別れる流れ。

余韻を残しているとも、世の無常とも取れてしまう。