RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

ラブレス@チネチッタ川崎 2018年4月23日(月)

封切り三週目で、
当該館では今週が最終。

席数284の【CINE5】の入りは二割ほど。


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オープニングの場面からして不穏な空気を漂わせている。

ピアノが奏でる不協和な音、そして
ロシアの冬の寒々しい風景。

これから起ころうとしている出来事を
端的に暗示する。


一組の夫婦が子供の親権で揉めている。

これがアメリカ映画であれば
親権をどちらが取るかの争いになるのに
この夫婦はお互いに子供を押し付け合う。

自分がより自由になるためには
今の子供の存在はただのお荷物。


離婚を協議中の夫婦の仲は冷え切っている。

いや、結婚当初からこの二人に
愛情というものが果たして有ったのかも怪しい。

それが相手への不信として増殖する過程が
繰り返される激しいなじり合いから明らかになって行く。


彼及び彼女は、僅か十二歳の我が子『アレクセイ』に対しても
自分達の不仲や、彼が邪魔な存在であることを隠そうともしない。


夫婦の各々の身勝手さが
これでもかというくらいに執拗に描かれる。
それもたっぷりと時間を取って。

互いの不倫相手との繰り返される情事、親し気な或いは豪華な食事。

その間、自分達の息子が、どんなに寂しい
辛い思いをしているのか、思い至りもしない。


そして居場所の無くなった『アレクセイ』はある行動に出る、いや
彼が主体的に動いたのかも実は判然としないのだが
その結果は両親を困惑させるには十分であった。


これを契機に夫婦の態度は少しづつ変わっては行くのだが、
果たしてそれは子を思う愛情から出たものなのかは判然としない。

そして、それと同様、
結末についても幾通りもの解釈が可能な〔藪の中〕。

観る側は狐につままれたようになる。

が、どう解釈しても、救済が示されていないことだけは確か。

しかし、それこそが、現代的な愛の不毛を描いた眼目であったかもしれない。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


「IMDb」での評価は7.7、
「Metascore」でのそれは86と
けして低くないのに、本邦では
「映画.com」「Filmarks」「Yahoo!映画」「ぴあ映画生活」の全てが
3点台半ばだったりする。

この感じ方の差は何に由来するんだろうか?