本日初日。
席数138の【CINE3】の入りは九割ほど。
時は大正。日本の特務機関で訓練を受け
引退するまでの短い期間に吉良邸に討ち入った浪士の数ほどを殺した名うての暗殺者が居た。
『リリー(綾瀬はるか)』と名のる彼女は、しかしもう十年もなりを潜めている。
一方、屋敷に暴漢に押し入られ、使用人は惨殺、
なんとか魔手から逃げ延びた少年がいる。
彼は別れ際の父親の
「玉ノ井の『小曾根百合』を頼れ」との言葉に従い東京を目指す。
その二人が出会ったことで、物語が動き出す。
護る者と護られる者の逃避行。
ただ、あまりにもありきたりのプロット。
その背景は様々も、
過去から何度も繰り返されて来たお話で新鮮味はまるでない。
勿論、本作では、時節柄の日本の情勢が
上手く取り込まれてはいる。
陸軍の暴走、それに対抗したい海軍の思惑、
日和見を決め込む内務省。
官憲からドロップアウトし
市井に潜んだ者たちこそが、軍備に頼らぬ平和を希求し活動する、
ある意味、時節や時宜を得た内容。
追う側の獲物も、最初は「機密文書」とされており、
なんと陳腐な、と
観る側は冷笑も、
次第に異なる姿が浮かび上がり、なるほど工夫だなと感心。
一方で主人公を狙う、(やはり)特務機関出身の暗殺者は
その目的が判然とせず、ただ敵役として、物語を混迷化するために立てられたようにも見え、
さほど感嘆する構成にはなっていない。
『リリー』にまつわる悲しい過去や
少年の父親との因縁も謎として提示されるが、
さほど心に響く内容ではない。
加えて、何故その二人を起用したのかを訝る出来の
ジャニーズ系のタレントが二人。
年長の方はオーバーアクト、年少の方はほぼほぼ棒の演技で
共に観ていて辛くなってしまう。
こうしたことをひっくるめての
監督ならではの構想なのか。
『リリー/小曾根百合』の造形は至って魅力的。
滅私としてそれに付き従う三人の男女の造形は宜しく、
彼女の為に命を張る理由は理解できる人物像。
これに『綾瀬はるか』を当て嵌めてアクションをさせ、一本撮りたいとの思惑は
判らぬでもないのだが、
如何せんエピソードの数々に既視感があり過ぎる。
評価は、☆五点満点で☆☆☆★。
『ジョン・カサヴェテス』が
妻の『ジーナ・ローランズ』を起用して撮った〔グロリア(1980年)〕。
当時の彼女は確か五十歳。
同じように、少年を守り逃亡を続ける旅に図らずも巻き込まれてしまった中年女性の
存在感は圧倒的。
こうした前作を観ていると、
どうにも今回の作品は小さく見えてしまう。