RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

マダム・フローレンス!夢見るふたり@109シネマズ川崎 2016年12月10日(土)

封切り十日目。

席数89の【シアター9】の入りは八割ほど。


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なんともユニークな夫婦の愛のカタチ。

実在の人物の「音痴」だけが強く前面に出た告知になっているけれど、
この物語の本質は互いを思いやる愛情の深さに在る。


もう老齢になっているにもかかわらず子供の様に純粋で
夢をみ続けている『フローレンス(メリル・ストリープ)』。

その夫で、しかし何故か不可解な二重生活をしている
『シンクレア(ヒュー・グラント)』。


妻は天真爛漫に見えても、実は暗い過去を持ち
それが夫婦の暮しに影を落としている。

夫は妻の夢を何とか叶えようと
獅子奮迅の動きをする。それは見ていて痛ましいほどなのだが、
周囲の人々も皆が皆『フローレンス』を応援する。

多くの音楽活動のパトロンになっていることもあるのかもしれないが
彼女のキャラクターがそれほど愛すべきものなのだろう。


何処かピントがずれている本人。それに合わせる内に
何時かしら(なんの関係も無い人から見れば)ずれて行ってしまっている周囲の人達。

それら全てをひっくるめて、暖かい気持ちになる笑いが
画面から溢れ出る。


しかし本作の見所はやはり『メリル・ストリープ』にある。

初めて観たのは〔ジュリア〕だったか。
しかし強く印象づけられたのは〔クレイマー、クレイマー〕。
その頃から演技力は折り紙つき。

その後ミュージカル作品も多く演じているわけだから
歌唱力はそこそこのハズ。

それがとんでもない音痴を演じる凄さと言ったら・・・・。

ある意味、一番の聞かせどころが〔夜の女王のアリア〕。
CM等でも多用されているので、実際とどれだけかけ離れているかが如実に判る。

エンドクレジットと共に実際の本人の唄も流れるけど、
寸分の狂いも無く演じ上げている。素晴らしい。

アップのシーンも多用され
ほんの少しの表情の揺らぎだけで深淵の感情まで表現する。

イマイマの日本に。これだけできる女優さん(いや男優さんも含めて)が
果たしているだろうか。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


前半生は兎も角、歌うことに邁進した彼女の後半生は
幸せなものだったに違いない。

それは一つ個人のキャラクターによるものに加え
周囲の優しい気遣いがそれを成さしめたのだろう。