封切り二日目。
席数89の【シアター9】の入りは二割弱。
ちょっと寂しい客足だけど、
この後の回は舞台挨拶付きなので、
主演の女優さんや男優さんが目当ての人は
そちらへ行くのだろうな。
直近では「LGBTQ」に題を取った映画が
随分と多い印象。
ただ何れの作品も、
彼等・彼女等が抱える葛藤に加え、
性別とは関係なく、人が人を愛するテーマが通底に在るので、
なんとなく似通った事後の感想を持ってしまう傾向はある。
本編とて例外ではない。
もっとも劇中で、特に後半以降に描かれる選択肢は
かなりショッキングではあるのだが。
二人の出会いは一目惚れにも近い、
{ボーイ・ミーツ・ガール}のセオリーを踏襲するもの。
しかし以降の展開は、モンタージュの構成からして
不穏さを感じさせる。
その原因は、『結(片山友希)』がシスジェンダーなのに対し、
『真也/愛(坂東龍汰)』の方はトランジェンダー
(女性の体で生まれたのに、心は男性)だったことにある。
事実が共有された後も、『結』の『真也/愛』を思う気持ちに
表面上は変化は見られない。
元々の相性はぴったり。
周囲の理解も得られ、
男性の体になるとの目標を応援もし、
関係は順調にそうに見えたのだが、
心の奥底に潜むわだかまりが、
あることを契機に爆発する。
これは、カップルあるある。
夢を追い求める子供じみた男と
しっかりした女の関係性で
過去から何度となく描かれて来た典型的な諍い例の転用。
言っては悪いのだが、このシークエンスでは、
あぁ、性の形は違っても、やっていることは何も変わらないのだな、と
変な感慨を持ってしまう。
しかしこれは、以降十年にも及ぶ
二人の関係性の序章にしか過ぎない。
以降は、あてこすりあり、
逃避の末の安易な恋愛ありで、
ちょっとしたメロドラマを観ているふう。
「LGBTQ」との色眼鏡を外せば
あまりにありがちな描写の数々。
ただ冒頭挙げたように、最後に二人が選んだ道は
相当に賛否が分かれるだろう。
ちなみに自分は、その手法に関しては「否」なのだが。
なんと言っても、確率が悪すぎるでしょ、
その行為は。
評価は、☆五点満点で☆☆☆★。
九十分弱の短い尺に
多くのエピソードと関係者を詰め込んだため、
エピソード間の遷移に唐突感があり、
人間関係やシチュエーションの説明も随分と不親切。
行間を埋めながら頭を回転させるのは
映像表現の醍醐味ではあるものの、
それにしても省略が多すぎで、
観ながらかなり混乱をきたしてしまう。
もう少し丁寧に場面を繋げれば、
違った感慨を持ったかもしれぬ。