封切り二日目。
席数290の【CINE4】の入りは二割ほど。
「TSUTAYA CREATORS' PROGRAM FILM 2017」準グランプリの映画化と聞く。
過去、
〔嘘を愛する女〕
〔ルームロンダリング〕
〔ブルーアワーにぶっ飛ばす〕
〔ゴーストマスター〕
〔水上のフライト〕
〔哀愁しんでれら〕
〔マイ・ダディ〕
〔先生、私の隣に座っていただけませんか?〕
と観て来たが、
1/3はまずまず、1/3は首を傾げ、
1/3は何故映画化を、と疑問に思う出来で、
はっきり玉石混交の作品群。
多くの特徴に挙げられるのは、
アイディアとプロットまでは良いものの、
脚本の練り込み不足とディティールの造りの甘さ。
勿論、本作とてそれは例外ではなく。
五年前に交通事故に巻き込まれた一家がいる。
父『司朗(玉木宏)』は右足に麻痺が残り、
母『繭子(桜井ユキ)』は病院で昏睡状態が続く。
妹『月(渡辺さくら)』は顔に大火傷を負い、
仮面を着けての生活で外に出ることも無い。
一人軽傷だった姉『花(南沙良)』も、
家族に対する負い目から引き籠ってしまっている。
ところが、突然、意識を取り戻したとして、母親が家に戻って来る。
容姿が変わっているのは整形の為と父は言うが、
過去の記憶や行動は実母そのもの、
最初感じた不信感を『花』は胸の奥に仕舞い込む。
しかし観客の側は、ここで黙っているわけにはいかず。
おいおい、五年も寝たきりだった人は、筋肉が衰え
歩くことさえままならずハズと突っ込みたい。
相当期間のリハビリなしには家庭復帰などできぬだろう。
そこをすっ飛ばしてのこの流れはあんまりでは?
さらに、いくら引き籠りとは言え、
入院中の母親を一度も見舞ったことはないんかい!
それがあれば、整形の有無も気づくだろうに。
もっとも、鑑賞者が疑念を持つことを前提の仕掛けであれば、
たいしたものと感心するのだが。
一方に、母が奇病に冒されてしまった、少年『純(大西流星)』がいる。
彼は『花』とも以前に会ったことがある様子。
『純』は自身の母と同じ奇矯な行動を取る人間が
甲府市内に複数人いることを突き止め、
それらが何れも過去に『司朗』と関わりがあったことから、
精神科医の彼こそが元凶と疑い始める。
と、まぇここでもねぇ、一介の学生が不審に思うなら
地域住民は更に早く気付くだろうし、
最終的にタネ明かしされる仕掛けは、
当該者が何年も生きること自体不可能と思われる。
それ以外にも、掛けた暗示が簡単に切れてしまったり、
疑っている人間に容易く気を許したり、と
脚本のご都合主義は連続。
ことほどさように本作は、ストーリーを展開させるためだけの
安直な設定のオンパレード。
直近の「朝ドラ」を遥かに凌ぐ進行は、ある意味徹底している。
サイコスリラーのようでもありミステリーのようでもある。
一連の事件の謎解きはされつつ、そのネタもほぼほぼ失笑レベル。
監修として催眠療法の専門家は入っているものの、
正直、〔ドラゴンボール〕の『ギニュー』隊長を想起してしまったが(笑)。
評価は、☆五点満点で☆☆☆★。
詰めの甘さは、登場人物にまで蔓延、
わけても最後のシークエンスにそれは顕著。
幾ら年寄りとは言え、やる時は
徹底的にやらんかい!!と、義憤さえ覚える。
そして最後のシーンは、ああやっぱりやっちゃったよとの
爆笑の場面。
どうやったら、これが可能になるんですか?と、
脚本/監督の『片岡翔』に問うてみたい。