RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

CUBE 一度入ったら、最後@109シネマズ川崎 2021年10月24日(日)

封切り三日目。

席数246の【シアター1】の入りは三割ほど。

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ある意味、製作委員会方式の悪い面が
表出してしまった作品。

1997年版の〔Cube〕は全編に於いて無名の俳優を起用、
それにより誰が生き残り、誰が死んでしまうのかの煙幕になっていた。

勿論、予算の関係もあろうが、セットも単一の
ワンシチュエーションもの、それが奏功したわけだが。

まぁ当節、それでは客が呼べないことは明白。
なまじ原典がカルト的な人気を博していることを勘案すれば猶更。

なので本作はその逆を張り、
一人でも主役を務められる演技人を集め(除く、子役。
日本の大方の、特に男児って、なんでこんなにダメなのかとがっかりする右代表)、
目くらましにしている。

ポセイドン・アドベンチャー(1972年)〕の
ジーン・ハックマン』の例もあり、
ピンで目立つ登場人物の先が読めぬケースはままありなのだし。


脱出劇に特化するにしても、各人の背景を描くことに腐心することも重要。
これは当該者の行動原理の背景の核になる部分。

なまじ理不尽な状況に突然放り込まれるのだから、
何故その選択をするのかの規範ともなる。

軽すぎれば説明不足だし、念を入れすぎればテンポが悪く、且つ
単純なエクスダスとの本筋から外れてしまう難しい匙加減。

残念ながらこの点では、満腔の成功を収めているとは言い難く、
思わせぶりな科白が吐かれながらも、幾つかは回収されずに終わっている。

加えて、世代間の断絶や虐待が共通のトラウマとの設定は安直に過ぎ、
確かに、敢えてそういった人物を選んだとの抗弁はあろうものの、
じゃあ何の為にとの説明が付かず、元々不条理劇なのだから
下手な問題意識はとっ払ってしまうのが正解の様にも思える。


こうした幾つもの瑕疵はあるものの、
続編の可能性も含め(たぶん、ムリと思うが)リメイクに挑んだ心意気は買う。

惜しむらくは原典に囚われ過ぎ且つ、展開の方向性を誤ったこと。
衣装の着せ方が巧ければ、もっと良質な作品になったろうにと、
そこが残念。


「原作は玉子で、それを素にした創作物は玉子料理。
なので、これは玉子ではないとの批判は的外れ」とは
ある映画人の言葉と記憶している。

より良い味付けができるのであれば、
大きな改変があっても大成功、もっとも、
そこまでの作品は多くはないけれど。


評価は、☆五点満点で☆☆☆★。


90分に対して108分に引き延ばした点は単純に改悪とも思えず。

ただそれを、やや冗長にも見える
かなりステレオタイプなドラマで埋めるのに拘り過ぎたのが決定的なミスと思える。

ここの創り方如何で、もっと化ける一本に昇華できたのかもしれぬのに、
なんとなれば、素材は極上なのだから。