RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

ビューティフル・デイ@チネチッタ川崎 2018年6月1日(金)

本日初日。

席数284【CINE5】の入りは二割ほど。


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その男『ジョー(ホアキン・フェニックス)』は
行方不明の女児を探し出し親元へ戻すことを生業としている。

しかしそのやり方は荒っぽく、どちらかと言えば非合法。

彼がなぜそんなことをしているのかは、
独自の正義感に加え
自身の過去の幾つかの体験が関係していることが
おいおい語られる。


剣呑な雰囲気を孕んだオープニングは
一見脈絡のなさそうな幾つかのシーンがジグゾーパズルのピースの様にばらっと展開され
何が起きているのか、鑑賞者の側にはとんと検討が付かない。

しかしそれが次第に一点に収斂する過程は
手練れの技と唸る見事さ。

ただ僅か九十分の短い尺に幾つかの要素を簡潔に盛り込んでおり
エピソード間の繋ぎもそれほど丁寧ではないので
観客は行間をかなり補って考える必要がある。

物語自体の緊張感と共に、
一瞬たりとも見逃すまいとする引き締まった感じがたまらない。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


『ジョー』は、ある意味、死に囚われている。

体の衰えた母親の面倒を見る必要が無ければ
おそらく簡単に自死を選択していたろう。

それは過去の複数のやりきれない体験がそうさせており、
白昼でも忌まわしい記憶が甦る。

しかしそれは、どこまでが幻視で
どこまでが現実なのかも我々には判然としない。


現在のアメリカが抱える病理をこれでもかと盛り込み、
あまりに救いの無い世界に暗然とした気持ちにもなる。

そう思って観れば、劇中で引き合いに出される〔サイコ〕も
家族間の確執が原点にあったことを思い出す。

もっとも、救済のカギになるかもしれない事象は
僅かに示されてはいるのだが。