RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

モスル あるSWAT部隊の戦い@TOHOシネマズシャンテ 2021年11月21日(日)


封切り三日目。

席数224の【シャンテ-1】の入りは三割ほど。

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邦題ではご丁寧に
「あるSWAT部隊の戦い」と、解説ともつかぬ一文が付されているが、
実際の主人公はタイトル通り
舞台でもあるイラク第二の都市「MOSUL」。

冒頭シーンで流れるように、
おおよそ人が住めぬほど荒廃したこの場所では、
本作で描かれたような悲劇が日々繰り返されていたに違いない。


発端は巻き込まれ型とでも言おうか。

主人公はまだ若年の新米警官『カーワ』。
ISの部隊と交戦中に
危ういところを『ジャーセム少佐』率いるSWAT部隊に救われる。

元は警官だった、十名ほどのその特殊部隊に
成り行きで徴用された彼は、目的も知らされぬまま、
行動を共にする。

が、前進をするに連れ、仲間は一人一人と亡くなって行く。
それでも部隊は、進行を止めようとはしない。

多大な犠牲を払いつつも、達成せねばならないミッションとは何なのか。
それほど重要なことなのか?


街の悲惨な状態を目の当たりにしつつ、
我々は『カーワ』と共に共時体験をする。

先ずはひりひりとするような戦場の描写に驚かされる。

事実を基にした、とされるためだろう、
部隊の構成員はあっさりと次々と死んでいく。

これがリアルだろうが、
顔と名前を覚えるいとまもあらばこそ、
意図的に感情を移入させぬような造り。


そして多くの死者を出した先に待っていた結末は、
平和ボケした我々から見ればあまりにも違和感のある情景。

そのために軍令をも無視した行動を取り、
味方であるはずの政府軍からも追われていたのか、と。

普遍的に過ぎて、あっけに取られるほど。
おそらく訳も知らされぬまま同行してきた『カーワ』にとっても
同じ思いではなかったか。

しかし、いや、まてよと思い直す。
彼等にとってはそれこそが求めても止まぬもの。
闘う理由であり、未来への希望ではなかったか。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


物語の本筋と併せて、主人公の人間としての成長も描かれる。

最初は生意気な小僧であった彼が、次第に人生の機微と
人として大切なことを知るようになる。


そして多くのメッセージが盛り込まれた最後のシークエンスでは、
この占領が大義の無いものだったことが改めて示されるのだ。