封切り六日目。
席数118の【シアター3】は半分の案内だと59席。
その七割は埋まっている印象。
ありがちな少女コミック原作モノでしょ?
ま、『浜辺美波』を観られればイイや、程度の軽いノリで出かけたのだが、
観終われば望外の出来の良さ。
登場人物達は年齢に不相応な哲学的な科白を時に吐き、
それはそのまま大人になった我々にも援用できそう。
脚本も練られ、カットも考え抜かれ、まるっきり安直な造りではなく、
モノローグも多用し少女漫画らしいテイストもちゃっかり再現、
流石に『三木孝浩』、この手を取らせたらピカ一の手腕
(もっとも、駄作との確率はほぼ半々だけど)と感心。
正直、かなり吃驚し、なかなかの拾いモノとほくほくする。
親同士の再婚で、同年代の男女が姉弟に
意図せずになってしまうのは、やや手垢の付いた導入部。
なので、そこからの展開が腕の見せ所、
本作では同じ団地に住む幼馴染の男女一組を更に登場させることで抑揚を付加。
最初は一方通行の四角関係が、
告白~ふり・ふられを通じて相互的な関係に変化。
その過程で、最初は独りよがりだった気持ちが
次第に相手の、更には家族の視点に転移し、
優しい 思い が溢れ出す。
この過程が、観ていてもどかしく、やきもきし、どきどきさせる。
学園祭や旧友との邂逅などの場面設定はありがちも
描かれるエピソードは心に響く。
そして、結末は至極気持ちの善いもの。
四人の主人公の選択をこれからの人生を
素直に応援したくなるような。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。
劇中に複数回ふれられる〔アバウト・タイム(2013年)〕は
タイムトラベルの能力を持つ一族に生まれた男の物語り。
タイムパラドクスはありまくりで、
仕掛けとしては破綻しているんだけど、
それを凌駕する切なさに満ちた一作。
短い触れ合いでも、人とのかかわりは
いかに愛おしく尊いか。
不満なことが多かった一日でも、
実はどれだけ輝きに満ちた時間だったのかを
痛切に思い知らされる必見の一本。