封切り三日目。
席数150の【SCREEN4】の入りは八割ほどで盛況。
「IMDb」では7.8の高評価なのに、
「Metascore」では51となかなかの惨状。
こういった一般の観客と評論家筋で評価が分かれるのは
どうも一定の傾向があるよう。
特に『ガイ・リッチー』のように
いわゆる信者が多い監督の作品には顕著に現れる気がする。
ある晩、豪邸に住む『レイモンド(チャーリー・ハナム)』の元を
『フレッチャー(ヒュー・グラント)』と名乗る男がおとない、
独り語りを始める。
両者は既知の様子だが、共に何者であるのか
鑑賞者の側にはまるっきり分からない。
会話の中の登場人物についても同様で、
場面は目まぐるしく切り替わるものの、
各人の関係性の整理が難しく、
漠として冗長な描写に睡魔さえ襲ってくる。
自分にしては、けだし珍しいコト。
が次第に、大麻ビジネスを手掛ける『ミッキー(マシュー・マコノヒー)』の存在が浮かび上がり、
『レイモンド』はその右腕、『フレッチャー』は一種の私立探偵で
彼らの裏の顔を暴く為に雇われていることが分かってくる頃から、
物語は拍車が掛かったように動き出す。
元はと言えば裏社会に嫌気がさした『ミッキー』が
自分が手掛けているビジネスを売却しようと知己に声を掛けたことが発端。
彼の気力が衰えた為と受け取った闇の紳士たちが、
この機会にあわよくば金を払わずに乗っ取ってしまえと
動き出したことによる騒動の顛末。
要は、監督の原点である
〔ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ〕や〔スナッチ〕のような
犯罪に纏わる群像劇。
ユーモアや音楽も盛り込んで、観る者を飽きさせない造りにはなっている。
一方で、シーンや演出の既視感は満載で、
ほぼほぼセルフオマージューとしか見えない場面が続出。
なるほどこれは、信者達が「帰って来た!」と狂喜するかもだが、
新機軸は見い出せず。
裏切り、裏切られが連続し、次々と新しいカードが切られ、
度毎に場面は異なる側面を見せる。
しかしこれも、複数枚を隠し持っているスペードのエースを
何度も提示しているふうに見え、ある意味節操がない。
一定のシバリを設けていないため、
次第にエスカレーションするさまは、やがて
口がぽかんと空いてしまい失笑が漏れるほど。
評価は、☆五点満点で☆☆☆★。
終映後に、近くに座っていた女性が口にした
「面白かった!『ガイ・リッチー』らしくって」との言葉が
いい意味でも悪い意味でも作品の本質を端的に表している。
郷愁は満たされた、でも
先への展望は見えたのか?