RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

星の子@TOHOシネマズ川崎  2020年10月11日(日)

封切り二日目。

席数142の【SCREEN1】は一席置きの案内だと実質71。
その九割方は埋まっている。
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イマイマの日本には大小合わせて二十万近い数の宗教法人があると言う。

中には本作で描かれるような傍目には怪しげに映り
うさん臭さを漂わせるものも多いだろう。


本作の主人公『ちひろ芦田愛菜)』は未熟児として生まれ
幼い頃に原因不明の皮膚病にかかる。

藁をも掴む両親は新興宗教に頼り、
そこが販売する「聖なる水」を使ったことで娘がたまさか快癒したことから
益々その宗教に傾倒する。

教団への献金のためか、次第に困窮する一家から長女は逃げ出し、
世間は好奇の目を向ける。

親戚は何とかマインドコントロールを解こうとするものの
夫婦は聞く耳を持たない。

ちひろ』はこうなってしまった原因は自分にあるのかと思い悩むものの、
今のままの両親を愛してもいる。


物語りは静かに進行する。

家庭内のことはさておき
普段の学校生活は穏やかそのもの。

中には同じ宗教を信じる者もおり、
昔からの親友とは時に恋バナを咲かす。

が、周囲は何時までも放っては置かない、
成長と共に『ちひろ』の心を乱す出来事が幾つか起きる。

ごく普通に周囲に存在する環境が
世間からズレていると明確に気づく瞬間が立て続けに訪れ
好まざるとにかかわらず彼女は変化を求められる。


ラストのシークエンスは印象的。

親子で見つめる夜空に、両親には見える流れ星が『ちひろ』には見えず、
彼女が見える流れ星は両親には見えない。

ボタンの掛け違いは最早始まっており、
親娘は早晩違う道を歩むことになるだろう。

しかし今は、束の間の平穏な時間に身を置く。

それを写すカメラの視線は何処までも優しい。


評価は、☆五点満点で☆☆☆★。


原作はどうか知らないが、作中では件の教団を
かなりフラットな視線で描写する。

時に怪しげな噂は聞かれるものの、
教団や信者達の活動は至って穏当、日常も淡々としている。

唯一、象徴的に扱われる「聖なる水」の実態を除けばのハナシだが。