RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

くれなずめ@109シネマズ川崎  2021年5月15日(土)

封切四日目。

席数118の【シアター5】の入りは六割ほど。

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一つは肉体的な死。もう一つは
人々の記憶から消えてしまったことによる死。

劇中では『永六輔』の言葉としてふれられている
「人間は二度死ぬ」は、実際誰によるものだろう。

命日は勿論のことながら
日本であれば春秋のお彼岸、お盆も亡き人を偲ぶ日だが、
とりわけ後者は魂が帰って来る期間とされている。


しかしお盆でなくとも、遺された者達の強い思いが集った時に、
死者が現生に甦ることがあるんじゃないか。

思い出や果たせなかった約束、
還せなかった物や強い後悔を仲立ちにして。


友人の結婚披露宴で余興をするために集まった六人の男どもは
高校時代の知り合いで、しかし、うち一人は既に死者なのが
本作での仕掛け。

赤の他人には当然見えないものの、
知己の間では何の違和感もなく見え、触れることもでき、
その場に居るのが当たり前のように皆々が振る舞う。

しかしそこに未来の展望は有り得ず、
繰り返されるのは過去の思い出のシーンばかり。

遺された五人にとっての楽しんだり悲しんだりのエピソードが
ちょっとしたきっかけで想起され
ひたすら再生される。

それらは何れも傍から見れば、お馬鹿だなぁこいつら、との中身も
じゃあ自分に引き当てた時にどうかと言えば
似たようなコトをしてたかも(笑)。


死者は既に成仏しているにも関わらず
唐突な死を受け入れられないのは残された五人の側。
良くある甦りモノとは逆のパターン。

記憶の再生はあくまでも自分達の気持ちの整理をつけるための儀式。
それによってケジメが付き、先を見据えた一歩を踏み出すことができる。

ただ唯一違っているのは五人以外の『ミキエ(前田敦子)』であるのは示唆的。
過去にうじうじと囚われて居る男とは違い、なんとも逞しい。


評価は、☆五点満点で☆☆☆★。


オリジナルは舞台劇と聞けば、なるほど
それっぽいなぁと思う。

登場人物は多くないし、場面も寡少。
画面の広がりもあまり感じられない如何にもな造り。

が、それが逆に、六人の主要な登場人物の
濃密な関係性を表現するにはピッタリで
上手く作用しているんだから
転じて福となす結果。