封切り二日目。
席数158の【SCREEN3】の入りは七割ほど。
現時点での「IMDb」での評価は7.7、
「Metascore」は88。
どちらかと言えば、評論家筋の受けが良いよう。
多くの賞レースにもノミネート、或いは
受賞もしている。
かし観終わって思わず首を傾げてしまう。
確かに感動はするのだけれど、
根っこにあるのは過去から幾度も繰り返されて来た物語り。
そこまでの賞賛に値するのか、と。
「縦のものを横にしてみる」
「ものとものをつなげてみる」
「違うところに置いてみる」
は新しい価値を生み出す時の要諦。
うちの幾つかを援用した本作に限っては
既視感の方が斬新さを上回る。
時は『ロナルド・レーガン』が大統領であった1980年代。
アーカンソー州の片田舎の耕作放棄地へ
韓国系移民の一家が越して来る。
夫はそこで一旗揚げようと目論むも、
妻はそれには懐疑的。
活発な長女に対し、長男は心臓に持病がありと
家庭内でも問題を抱えている。
また次第に分かって来るのは、
その農地が曰く付きの場所であることや
夫が母国を捨てたことの経緯。
そしてそれらは何れも、一家にとっては負の要素。
雛の雄雌の選別作業と合わせ
農業の負荷が増大するに伴い、
ベビーシッター宜しく、妻の母が韓国から呼び寄せられ、
これが一つの転換点。
タイトルの「ミナリ」は日本原産の芹の韓国での呼称。
食べては勿論、薬効もあるので、重宝されているらしい。
外来植物の種を勝手に持ち込んでイイの?との
疑念はありつつ、適地を選んで祖母が種を撒いたことが
あとあとの展開に効いて来る。
思うに任せない農地の経営とは裏腹に、
一家を受け入れた地元民の眼差しは優しい。
教会に集う人々を始め、農作業をアシストしてくれる人、
鑑別場で出会う人々。
個人的にはこの部分が決定的に違和感も、
鑑賞後に調べてみると『レーガン』時代ならではの背景は確かにあったよう。
それでも、これほどの田舎町。
黄色人種への偏見はホントになかったの?とはかなりの疑問。
一方の韓国は『全斗煥』による軍事独裁政権下。
主人公達が故国を去ったことについては得心が行くもの。
幾つもの試練が訪れ、それを乗り越えようとあがく一家。
度毎に試されるのは家族の絆で、
その先に果たして光明は見えるのか。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。
とは言え先にも書いた様に
古今東西で同様のモチーフは繰り返し語られて来た。
目新しさの点では今一つ。
しかし開拓精神が旺盛な米国では、設定を変えての再生産でも、
とりわけ好まれる筋立てなのかもしれない。
特に多様性が喧伝される今の時代においては、
本作に組み込まれた要素設定は
尚更ウケが良いだろうと感じてしまうのは
やや斜に構え過ぎだろうか。