RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

ヘレディタリー/継承@TOHOシネマズ日本橋 2018年12月14日(金)

封切り十五日目。

席数119の【SCREEN3】の入りは七割ほど。


本作もまた、本国の評価と日本のそれが真逆の一本。

「IMDb」では7.3、「Metascore」に至っては87!

一方、本邦では
「映画.com」で3.5、
「Yahoo!映画」では3.24、
「Filmarks」は3.7と多少は良いモノの
「ぴあ映画生活」に至っては62点だものなぁ。

その差が何処に起因しているのかを
考えながら観るのもまた一興。


イメージ 1



〔シャイニング〕が「土地」に取り込まれ
逃れられなくなったことから生まれる恐怖だったのに類似し、
こちらでは「血」に絡め捕られた一家の悲劇が描かれる。

元々「heredity」=「遺伝性の」意でもあることだし。


解離性の精神障害を発症し亡くなった祖母の死後
『グラハム家』では薄気味の悪い出来事が頻発する。

もっともそれらの多くは「幽霊の正体見たり枯れ尾花」的。

日常のちょっとした異音にさえ過剰に反応したりなどのありきたりのこと。

場面ごとに主体となる者がそう感じているだけの表現なので
思い込みとのギリギリの線。

何かこの世ならざるモノが見えると等の直截的な事象ではない。


しかしその一連の描写は、
重みのあるBGMとゆったり動くカメラを併用し
神経を苛む類の恐怖でじわじわと盛り上げる。

血飛沫が撒き散らされるスプラッター的要素はないし、
有り得ない場所から何者かが飛び出す鬼面人を驚かす場面もほぼ無い。

意図的にそれらを極力排除し、それでも怖がらせることを目指した
確信的な取り組みと見た。

要は精神的にぐいぐいと攻めて来るオールドスタイル。


そしてまた本作はホラーではなく、サイコスリラー。

勿論、幾つかの超常的なエピソードはあるものの、
恐ろしさの源泉は冒頭の葬儀と、娘のエレンが自身の一族の奇矯な病歴を(勿論、自分も含め)
語るシーンにこそ収斂される。

それを含め伏線の張り方が秀逸。

観終わってから、ああ、あのシーンはこの意味だったのかと
想起させられることが多々。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


最後のシークエンスがまたふるっている。

同様の生々しい事件が過去に幾つも起きているアメリカでの受け取り方と
日本でのそれは当然違うだろう。

たぶん肩透かしに遭った如くに受け取ってしまうのだろうね。

制作サイドと配給側と観客のボタンの掛け違いが
評価の差を生じさせていると思うがどうだろうか。