RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

パラサイト 半地下の家族@TOHOシネマズ上野 2020年1月12日(日)

封切り三日目。

席数333と同館でも最大キャパの【SCREEN3】は満員で
これは正直意外。

へぇ{韓国映画}でねぇって思いつつ、
各メディアでの取り上げられ方や
「カンヌ」での「パルムドール」受賞、
アカデミー賞」候補等の事前煽りが効いているのかな、であれば
配給サイドは相当に上手く盛り上げたもの。

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事業に失敗し失業中の『キム(ソン・ガンホ )』の家族は
アルバイトで糊口をしのぎ場末の半地下の住宅に一家四人で暮らす。

冒頭からテンポ良く描写されるその生活の一端は既にユーモアに満ち、
傍目には悲惨なはずなのに切迫感よりも哄笑が巻き起こる始末。

Wi-Fiの電波を捉まえる為に工夫するシーンなどがその最たるもの。


ある日、長男の『ギウ(チェ・ウシク)』が
留学する友人の替わりに富豪の『パク』家の家庭教師の口を紹介される。

夫人の『ヨンギョ』、娘の『ギジョン』にも気に入られ
一家の内情を知った『ギウ』は、自身の家族の夫々を次々と引き合わせ、
あたかも宿木が寄生するように、
金持ち家庭の主だった雇人になり替わって行く。

次第に懐に余裕もでき、将来への希望も抱き始めたものの、
そう都合の良いことばかりが続くはずもなく・・・・。

禍福はあざなえる縄、調子の良い時ほど足元をすくわれ易くなるのは
歴史が教える通り。


貧乏な一家が富者に侵食する過程はコメディの要素が色濃い。
滅法笑わせてくれるエピソードの数々がてんこ盛り。

しかし最初は慎重であった一家が
人の好いある意味ピュアな金持ちの家族を侮り、気が緩み始めた頃から
物語りは大きく転調、サスペンス色が強くなる。

しかしそんな中にも黒い笑いを混ぜ込んでリズムを作るのは
ここでの語り口の手柄。

そうして全てのお話しが語り終えられた時に
後に残ったものは何だったか。


日本の相対的貧困率は16%あり
G7の中ではアメリカに次いで二番目の高さという。

また社会格差の拡大がマスコミに取り上げられないことはないくらい
日々その増大をも実感もする。

お隣の国、韓国も似たような状況なのだろう。


富裕層はより高所に住み、貧困層はその逆で
低処にくすぶるのはどの時代でも世の常。

嘗て『黒澤明』は〔天国と地獄〕で
『竹内(山崎努)』に『権藤(三船敏郎)』の住む高台の豪邸を見上げさせることで
貧富の差を表現した。

本作の監督『ポン・ジュノ』は豪雨の中を
半地下の我が家に大急ぎで下って戻る『キム』家の人々でそれを描写する。

高低の差を直截的に見せることはないけれど、
運動量で感じさせるのはなかなかの手練れ。

何れも秀逸な表現でありながら、後者の方をより卑近に感じるのは、
直近で打ち続く災害を多く見ていることも背景にあるかもしれない。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。


同じ貧困や格差の問題を描きながら
わたしは、ダニエル・ブレイク〕とはかなり異なる印象なのは
お国柄か監督の嗜好性か。

何れにしろ、両者に通底する問題意識は共通なのだ。