二ヶ月振りの映画館。
こんなに間が空くのは、再び映画を観るようになった
ここ十数年では初めてのコト。
久方の劇場は、ロビーのシート等は撤去され
床にはソーシャルディスタンスの為の目印テープが其処彼処。
係員さんとはビニールシートで隔てられ、
入場にはマスク着用が必須。
入り口にはサーモグラフィーも設置、
体温が高い人はここで注意を受けるのだろう。
館内は全体的に閑散、コンセッションも寂しげで
この状況で業界は生き長らえるのだろうかと心配になる。
封切り二日目。
席数150の【SCREEN4】は、一席おきだと75のキャパだから
客の入りはその八割方か。
元々はストレート・プレイ用に書かれた台本をアレンジし
映画に転用。
舞台での演出はどうなのかは知らないが
スクリーン上では人物のアップを多用、
その分、心理劇的要素がより強くなった感。
主人公の養父母・友人たち・高校の教師と
ある意味分かり易い感情が投射。
唯一読めないのが主人公の表情で、
時折見せる剣呑さを含んだ暗い影や
張り付いた様な笑顔を含め
何処までが素直な心根の反映であるのか?
『ルース・エドガー』はアフリカの紛争地帯エリトリアで生まれ、
幼い頃から(たぶん生きるために)銃を手にする。
詳細な経緯は語られないものの、
アメリカの裕福な『エドガー』夫婦に養子として迎えられ、
養父母の献身と、勿論、本人の努力も相当なものだったろう
アメリカでの文化にも順応、
今では文武両道、人格的にも高潔、
「ノヴァハイスクール」を代表する優等生として将来を嘱望され
周囲からはやっかみも含め「オバマ」に比されるほどに成長。
しかし、周囲からの期待が強くなるほど
本人が重圧に感じるのはありがちなハナシ。
ただそれには、養母『エイミー』の過剰な期待も要因かもしれない。
時間的にも多くの犠牲を払い、養子を社会に適用させた対価としての。
それに対比するように『ハリエット』の存在が配される。
黒人で、独身の女性教師。
精神を病んでいる姉妹『ローズ』の悩みも抱えつつ
本人は黒人やマイノリティー、ジェンダーについて深く思いを巡らす。
が、根っこは共通も、発露の方向性が異なる二人の姿勢がぶつかった時に
幾つかの事件が続けざまに起きる。
『ルース』に感情移入するのか、『ハリエット』の視点に立つのかで
事件の見え方は対極ほども違って来る。
話中での真相は藪の中も、個人的には『ルース』、
(元)ガールフレンドの『ステファニー』、
「d.runner」と表示される謎の人物(おそらく、distance runner=長距離走者と推察)による
意趣返しの側面と誰何。
教師側の思い込みの軽重も含め、
もやっとした感情がわだかまる様に残ってしまうのだが。
評価は、☆五点満点で☆☆☆★。
直近の「ジョージ・フロイド」事件に代表されるように、
本作も人種差別をモチーフにした一作。
語り口は直截的ではないにしろ、
一言一句や些細な身体表現に
そのテーマは現れる。