RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

デトロイト@TOHOシネマズ川崎 2018年1月27日(土)

封切り初日。

席数335の【SCREEN6】の入りは六割ほど。


イメージ 1



監督の『キャスリン・ビグロー』が
現在までも連綿と続く米国の暗部を
ぎりぎりとえぐり出す。

ただそれは、錆びたナイフを使った時のように
鈍い痛みに満ち満ちている。


冒頭、60年代後半の彼の国での
黒人が置かれた立場が説明される。

それは本作の舞台でもある【デトロイト】以外の場所でも同様、
常に一触即発で
いつ大きな内乱にエスカレーションしてもおかしくはない状態。

そして「サラエボの銃弾」ほどの明確な契機がないまま
五日間に渡る暴動が発生する。


スタンフォード監獄実験」と言う心理学の実験がある。

普通の人を看守役と囚人役に分け長期間その役を演じさせると
各々が次第に与えられた役に相応しい行動を取るようになる。

本作でも、市警・州警・州兵の夫々は
自分の職務により忠実であろうとの根本理念がまずある。

特に市警の側には日頃から接している黒人市民に対しての
差別的な態度が根底にあり、そのことが
悲惨な事件の遠因になっている。

それは導入部で触れられるのだが、
まさしく『ジャン・バルジャン』が味わった決めつけの連鎖、
1700年代の頃から何も変わってはいない。


本作品も最近の流行、やはり「事実を基にした」物語。

が、事件が起きたコト自体は実際としても、真相がどうだったのかは
現在でもようとして知れていない藪の中。

なので監督は、関係者へのインタービューにより
出来事の大枠を再構成する。

しかしそのことが、米国社会の抱える深い闇を
際立たせることになったのはなんとも皮肉。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。


50年前の当事者達の多くは今でも存命、
そして事件の影を引きずって生きている。

殺害されてしまった人々の家族を含め
その悲しみは終わるコトがない。

それが観る者の側の気持ちを
一層重いモノにさせる。