RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

ハリエット@TOHOシネマズ上野 2020年6月7日(日)

封切り三日目。

席数97の【SCREEN1】は御多分に洩れず一席置きの案内なので
実質48席程度のキャパ。
それを加味すれば六割ほどの入りか。

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南北戦争」の前後を題に取った作品ながらここには
エイブラハム・リンカーン』『ユリシーズ・グラント
『ジェファーソン・デイヴィス』『ロバート・E・リー』と言った
我々が世界史で学んだような人物は一切登場しない。

本作の主人公『ハリエット』の存在を知っている日本人は
(自分も含めて)いか程の数か。

もっとも、以前『バラク・オバマ』が大統領だった時に
新20ドル紙幣にデザインされる偉人として、
アフリカ系アメリカ人が初めて
しかも女性がアンケートの結果から選ばれたとの報道があった
うっすらとした記憶。

それが彼女だったのね。
要はアメリカ国内ではそれなりに認知されている存在。

その背景には、
奴隷の逃亡を助ける活動に加え、
その後の黒人や女性の権利向上のための運動や
慈善家としての行動も大きかったのだろう。


本編ではそんな彼女の人生のうち、
脱走奴隷を逃亡させた活動家としての時期にスポットライトをあてて描く。

文字も読めない奴隷の『アラミンタ・ロス』が
如何にしてエクソダスの女性指導者『ハリエット・タブマン』になったのかを
事実と脚色を組みあわせ、刺激的なエピソードで力強く。


奴隷主や奴隷監督の横暴や虐待の表現はある意味ステレオタイプ

一方で奴隷解放運動としての非合法組織である
「地下鉄道」や「車掌」「乗客」といった存在は
今更ながらだけど目新しく。

なまじ『ハリエット』のプロフィールに対する知識の無さが幸いし、
先の展開が読めないため、手に汗握り、胸の動悸が終幕迄静まらない。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


もう随分と昔のことだが、
戦前~戦中に大連に住んでいた女性と話す機会があった。

彼女によれば、日本人が築き上げた文化都市が
終戦によって奪われてしまい残念で仕方ない、との認識。

戦後六十年経っても持っている頑なな思いに驚くと共に、
制度の上に安住していた奴隷主の態度にも通底するものを感じた。

それを当たり前として育った人々の意識を変えさせるのは
いか程に困難か。

現に彼の国では、過去に根差した差別が今でも存在し、
それが折にふれ溢れ出している。