RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

ボーダーライン@チネチッタ川崎 2016年4月9日(土)

本日初日。

席数407の【CINE 11】の入りは八割ほど。

個人的には〔灼熱の魂〕〔プリズナーズ〕〔複製された男〕と
良作を生み出している監督だけに、期待するところ大だったんだけど
この入りは正直意外。

客層を見ると、高齢の男性が多く、
映画好きなのか、ドンパチが好きなのかは判然としないけど
もし後者であれば、若干肩透しを喰らった気になるかも。


イメージ 1



ではあるけれど、のっけからの緊迫するシーンの連続には圧倒されてしまう。
同時にこれが、アメリカとメキシコの間に横たわる
麻薬を巡る抗争だと言うことが、しっかりと理解できる一連のシークエンスでもある。


原題の〔Sicario〕は殺し屋の意。
冒頭に流れるテロップでそれについての説明がひとくさりあるんだが、
邦題の〔ボーダーライン〕、実はそれほど悪くない。

両国の国境を巡るハナシでもあるし、
同時に善悪の彼岸についてのハナシでもある。

両義を上手く掬い上げた表現になっている。


FBI捜査官の『ケイト・メイサー(エミリー・ブラント)』が
麻薬カルテルを壊滅するプロジェクトにリクルートされ、
志願するところから始まる一連の流れは、
何故彼女が選ばれたのか、から
チームを統括する『マット』や、その片腕である『アレハンドロ』の存在を含め
多くの謎が観客に提示される。


そして幾つものボーダーもまた、我々の前に示される。

それは文字通り、両国の国境の往還でもあるし
善と悪との相克でもある。

メキシコの警官は勿論のこと、アメリカの国内までも
その腐敗は浸蝕している事実。

または、正義を行っているハズが、実は悪と密着することで
見掛け上の安寧が保たれている事実。

その中で主人公は、正しいコトを貫き通せるのか。

が、物語の中途で語り手の視点が切り替わるように、
実はこれらの境目も曖昧であることが痛烈に描写される。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。


しかし全てのエピソードが語り終えられても
明快な救済は示されない。

今後もアメリカとメキシコの間での
麻薬の攻防は続き、多くの死者が出るのだろう。

そしてメキシコでは、恐怖が身近に在り過ぎ
それに慣れてしまう日常が続くのだろう。