RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

否定と肯定@TOHOシネマズシャンテ 2018年1月1日(月)

封切り四週目。

席数190の【CHANTER-3】は満員の盛況。


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アメリカの司法制度も相当に判り難いと思っていたら、
イギリスのそれも同様のよう。

システムそのものも勿論、名誉棄損については、
被告側にその立証責任があるとの違和感は、しかし
本作でのサスペンスを盛り上げる一つとして、また
被告人=アメリカ人・被告側の弁護団=イギリス人の
裁判に対する異なる理解の相克を炙り出す要素としても機能し
興味深い。


が、本作に於いては、それなどはまだ判り易い方。
裁判の論点そのものにかなり疑問符が付いてしまう。

なのでそういった七面倒くさいことはある程度脇に置いて、
ナチスによるホロコーストは実際に有ったのかが
判決の帰趨に大きな影響を与える争点と割り切り、
その部分に焦点を当てた造りになっている。

それ故、実際は数年に渡る長い物語を
百分程度の短い尺でテンポ良く描写できたわけだが、
新米弁護士の変なサイドストリーなどは不要なので、
もうちょっと時間を足し、別のエピソードを盛り込みながら
物語りに厚みを与えてくれたら、との恨みはある。


それにして、歴史的な事実が
争点になってしまうこと自体不思議でしょうがない訳だ。

もっとも、無かったことの証明よりも
あったことの証明の方が大変なのは世の常。

どんな背景があるにしろ
否定論者は世界中に数多存在する訳で、って書いていたら
本邦でも似た様なコトが有ることに気が付いた。

提示されている証拠写真の一枚が信憑性に欠けるので、
事件全体が無かったことになるとの強引な弁証は
当の本人は満足できるかもしれんけど、
フラットな目で見れば、
全ての証拠が欺瞞となってこその証明でしょ?
と、思ってしまうわけだが。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


ホロコーストの犠牲者と存命である被害者に対しての
敬意の無い態度は許せんとのヒロインの断固たる思いが
事なかれ主義の数多を凌駕して行く過程は爽快も、
もし異なる結果が示されていたら、
彼女は世間からどんな指弾を受けたのだろうと
ココロ寒くなると同時に、
正しくないことが事実とされる可能性は
常に孕んでいる危険性にも思い至る。