封切り四日目。
席数226の【SCREEN5】の入りは四割ほど。
そもそものタイトルがミスリード気味。
〔フォードvsフォード〕が正しいかと。
何故なら本作で描かれる実態は経営層との軋轢に苦しむフォード社内部の現場最前線。
オマケに最後で快哉を叫ぶシーンも見当たらず。
でも米国人の観客は、
嘗て自国の基幹産業の右代表であった無骨な自動車メーカーが
欧州のスタイリッシュな企業を打ち負かすシーンに期待し熱狂する図が透けて見える。
ただ、この種の上層部の身勝手さは昔も今も同様。
「新しいことをしろ」との業務命令に企画が出されれば、
やれ「本業に比べビジネススケールがちいさ過ぎる」とか
やれ「利益を出すまでに年月がかかり過ぎる」などと難癖。
今の主力ビジネスだって最初からそんなに素早く利益を上げたわけでもなかろうに。
そんなに都合の良いモデルがそうそう簡単に転がっているわけではなし、
だったら最初から言うなよってハナシ。
それと近似のエピソードがここでもしっかりと語られる。
買収を持ちかけた「フェラーリ」から袖にされ、
「フォード」の二代目社長は怒り心頭、
だったら「ル・マン」で打ち負かしてやる、と
プロジェクトを立ち上げ大枚を投じる。
もっとも、どちらも札束で頬を張るようなやり方に違いはなし。
大本の魂胆も狭小と思わぬでもない。
そうして雇われたエンジニア兼設計士の『キャロル・シェルビー(マット・デイモン)』と
型破りなイギリス人レーサー『ケン・マイルズ(クリスチャン・ベール)』が
経営層と激しく対峙しながら優勝を目指す。
しかしそう簡単に結果が出るハズも無く、元々の反対派から入る横やり。
が、度重なる(社内の)妨害を全て吹き飛ばしてしまうようなレースのシーンが圧巻。
それはスピードによる爽快さよりも、ちょっと暴力的で
泥臭さが漂う凄み。
大きなスクリーンを通して、こちら側も「G」を感じるそんな圧力。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。
結局は資本の論理が帰趨を握るのだが
ここで面白く描写されているのが、
後に「奇跡の経営者」と称されることになる『リー・アイアコッカ』。
当時のマーケティング責任者との肩書も、ちょっと日和見的な造形。
亡くなったのはこの映画が公開されるほんの数か月前だけど、
生きていて観る機会があったら、どんな感想を持ったろうか。