RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男@TOHOシネマズ新宿 2018年4月1日(日)

封切り三日目。

席数407の【SCREEN7】は満員の盛況。

こんな重厚な人間ドラマが満席になるだなんて
アカデミー賞」の効力はつくづくだと改め思う。


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あの映画〔ダンケルク〕での大規模な撤退作戦の裏側で
イギリス国内ではどのような政争が起こっていたのかを
当事者である首相の『チャーチル』にスポットライトを当てて描き出す。


1940年5月、欧州に『ヒトラー』の脅威が迫る中、
首相に推挙された『チャーチル』ではあるが、挙国一致内閣とは名ばかり、
その就任は万雷の拍手を持って迎えられたものではけしてなく、
彼を待ち受けていたのは政権内での圧倒的な孤立であった。

劇中では、頼りになるのは糟糠の妻と
新しく雇い入れた秘書ばかり。

敢えて入閣させた政敵は、主戦論とは反対の論陣~『ヒトラー』との和平案~を
ぶち上げる始末。

しかし、そんな無援状態の中、思わぬところから援軍が現れ、
そして庶民も彼の方針に賛意を示したことから
一気に息を吹き返す。


当時『チャーチル』は66歳。最終的には90歳までも生きる訳だが、
現在の同年代よりはかなり老齢の実感であったろう。

老いが迫りくる中、信念を貫くために奔走する姿を
主演の『ゲイリー・オールドマン』が
辻一弘』による特殊メイクの力を借り
迫真性で演じ切る。

脚本の作りに加え、この点が本作の見どころの一つ。

その熱演となり切り振りに、演説の場面では
思わず一筋二筋、鑑賞者の頬を涙が伝うほど。


尤も、周囲の彼に対する疑義は故の無いことではなく
その前も後も、実際のところは失政も多い。
必ずしも完璧な人間ではないのだから。

物語では、
歴史的に名高い「ダイナモ作戦」の完遂に焦点を絞ることで、
そういったことは全て一旦脇に置き
都合良く省略しているようだけど。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。


それにしても、原題の〔Darkest Hour〕から、『チャーチル』の名前は兎も角
ヒトラーから世界を救った男」とは良くまぁ捻り出したものだと、
日本側の供給サイドの商魂のたくましさにはほとほと感服。

まぁ、例え和平交渉が一時的には功を奏しても、その後のソ連侵攻を見れば
イギリスとて安泰でなかっただろうことは歴史が証明しているところ。

結果的にはイギリスが持ちこたえることで『ヒトラー』の勢いは削がれたのだろうし、
その意味での彼の功績は大きくはあるものの、一個人に帰趨させるのは
さすがに無理があるだろう。