RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

トランボ ハリウッドに最も嫌われた男@TOHOシネマズシャンテ 2016年8月14日(日)

封切り四週目。

席数201の【CHANTER-2】は満員の盛況。


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アメリカという国の両極さを
如実に現している政策と思う。

赤狩り」や「禁酒法」、あと
戦前の「排日移民法」。

中には良心の人もいるんだろうけど
レミングの行進かよって思うくらいに
同じ方向に一直線に突き進む。

尻馬に乗る人は多数、
利益を得る人は少数。
非生産的な施策による損益は
いかほどのものか。


で、『ダルトン・トランボ』。
ちょっとの映画好きであれば
ローマの休日〕〔スパルタカス〕〔栄光への脱出〕の脚本家で
特に〔ローマの休日〕については「赤狩り」による迫害のため
変名でクレジットされているのは知られたハナシ。


本作は彼の半生記。

最初は順調に経歴を重ねていたものの、
アメリ共産党」党員であった事実もあり
聴聞会で審問され、
仲間を売らずに沈黙を守り通したことから実刑判決を受け収監、
映画界から追放される。


しかし、ここからが面目躍如。
名前を変え、安いB級作品の脚本を書きなぐる。

あまつさえ、同じ境遇の同士を糾合し
プロダクション化してしまう。

まさに反骨の人。

もっとも、
兎に角、書かなければ衣食住は勿論
自身の心の中が満たされない。
彼の性としての必然性によるものだろうけど。


好感が持てるのは
けして正義の人としては主人公を描いていないこと。

特に不遇であった時代の家庭人としての身勝手さ、或いは
労働組合のデモへの賛同にしても、
湖に面した瀟洒な別荘を構えるハイソサエティ
暮らしがベースにあってのこと。

逆に人間臭い両義性が上手く出ており、
実際のことか或いは誇張かは判らないけれど
複雑な人格の描写としては秀逸。


結局、彼の名前が再びスクリーン上に戻ってくるのに十三年、
名誉が回復されるには三十年近くを要している。

その期間の絶対値についても驚きだったし、
ましてや業界は、どれほどの損失を蒙ったのか。
考えただけで暗澹とした気持ちになってしまう。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。


所謂内幕モノなので、
過去のスターやスタジオ経営者、監督などが実名で登場する。

ここでは『ジョン・ウェイン』『カーク・ダグラス
『オットー・ブレミンジャー』等々
(あ、あと『ロナルド・レーガン』とか)。

何れも、なんとなく似ているなぁ程度で収斂させ、
これも意図的な手加減なのだろう。

主要な登場人物はエンドロールの時に
往時の実物写真が提示されるので
見比べるのも面白い。