封切り九日目。
席数98の【SCREEN10】は一席置きの案内なので実質49席。
そのほとんどが埋まっている感じ。
「伝説の殺し屋」と言えば『三谷幸喜』監督作の
〔ザ・マジックアワー〕での『デラ富樫』。
本当に居るのかどうか判らない人物をめぐるてんやわんやを
繰り返しのギャグを多用して描き、
(彼の映画にしては)なかなかご機嫌な一本。
(主要な登場人物が幾人か被っている)先作の憶えと、
本作の予告編を見て、コメディ作品を期待していたら、
おっとどっこい目指したのはどうやらガチな{ハードボイルド}。
もっとも、そこは曲者の『阪本順治』監督と
脚本の『丸山昇一』。
かなりアクの強い仕上がりに驚くとともに
想定外な展開。
たぶん、ではあるけれど、仲間内でわちゃわちゃと集まって飲んでいる時に、
盛りがったハナシの流れでできたものと想定。
親子での出演も多いし、役柄と自身の経歴がないまぜになった科白からも
それはうかがえ。
『石橋蓮司』を主役に据える課題と共に、盛り込まれているのは
消えて行く古き時代の【新宿】へのオマージュとコラージュ。
そこへ過去の映画作品の想いも詰め込んでの脚本化。
嘗て『内藤陳』が【ゴールデン街】に構えていたバーの名前は「深夜プラスワン」。
彼の死因は食道癌だったか。
〔野獣死すべし〕で『伊達邦彦(松田優作)』が語る『リップ・ヴァン・ウィンクル』の挿話で
飲まされた酒の名前は「XYZ」だったよなぁ。
『桃井かおり』も「新宿厚生年金」でコンサートを開いていたし
(後で調べたら1982年と84年に)。
などとの想起が次から次へと湧いて出る。
評価は、☆五点満点で☆☆☆★。
主人公が殴られ記憶を無くす等のお約束シーンはないものの、
BGMにはきちんとJAZZ使い、夜のシーンも印象的。
ただ、街が纏っていた猥雑さは、既に画面からは漂って来ないけど。