封切り九日目。
席数142の【SCREEN1】の入りは六割ほど。
現実世界での1984年は「ロサンゼルス五輪」があった年。
四年前の「モスクワ五輪」を多くの西側諸国がボイコットした報復で
今度は東側の列国が不参加を表明。
華やかな式典の中にも、東西の冷たい関係が潜んでいた時代の記憶。
当時の合衆国大統領は、その昔「赤狩り」に勤しんだ『ロナルド・レーガン』。
が本作に登場する大統領は、彼と、リーダーには不向きと言われた『ジョージ・W・ブッシュ』と
現職の自分第一主義『ドナルド・トランプ』を足した様な、
もう、箸にも棒にも掛からぬ人物として表現されている。
脚本自体は良く練られている。
広範な客層をきちんと想定した、ある意味先読みがし易い造り。
魔法のランプ宜しく、一つだけ願いを叶えることができる石を巡っての攻防は、先ず
主要な登場人物達が何を望むのかがカギ。
それを『ダイアナ(ガル・ガドット)』だけは
望んだのかすらわからぬ表現にし(いや望まないわけはないのだが)、
後々思い返してみれば、と判らせる流れから既に製作者側の術中にはまっている。
が、良いことの裏には必ず条件が。
それは何かを得るためには何かを差し出さねばならぬ、所謂
等価交換。
叶えられる見返りに、大事なものを失う設定が後々効いて来る。
150分を超える長尺も中途緩むことなく、
最後までそれなりにテンションを保ちながら見せ切ったのはなかなかの手柄。
ただ、敵役の造形がどうにもチープで・・・・。
全世界を巻き込んでの攻防は良しとして、
神vs神の前作に比して、
邪神の憑代vs神の設定は、
前者のモチベーションがあまりにペラペラ過ぎて鼻白んでしまう。
世界中の人々の希望を聞けば、矛盾が溢れ出し
収拾が付かなくなることくらい中学生でも判りそうなもの。
それを大の大人が臆面もなくやっちゃうのは、どうにも、ねぇ。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。
本編後のオマケ映像は、ムカシを知る我々にはサプライズな余録。
エンドロールには献辞もちゃんと載せられているし。
でも、年月の経過はある意味残酷。
そのままの姿を見たかったかと聞かれれば、かなりビミョーなところ。