もう数十年も昔のこと。
大学の一般教養の生物の時間に
教師が本展のポスターにあしらわれている一枚を提示し
「この写真について述べよ」との問題を出した。
自分は『土門拳』の〔法隆寺遠望〕との知識はあったので
その旨を書いたところ、
「黄色い花はセイタカアワダチソウで帰化植物。
日本の原風景の寺社の景色とはそぐわない気がする」
これが正解、と。
ただ一人、その解答があったらしい。
ある意味ズルい出題ながら、
この写真を観る度に、その時のことを思い出す。
おっと、閑話休題。
『土門拳』の自選作品集からのピックアップとのことで、
風景・自然の木々・寺社の庭・仏像と
カラー・モノクロ合わせ六十点近くが並ぶ。
中ではやはり古仏の数々に目が行く。
お顔だけをアップにしたもの、全身を写したもの、と。
静謐の中から浮かび上がる慈愛。
とりわけ半跏像では見惚れてしまう。
その対極にあるような神将での
悪戯っ子のような顔立ちも活写する。
本質を掬い上げることの巧みさに
作品の前に暫し立ち止まる。
会期は~6月1日(土)まで。