RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

1秒先の彼@TOHOシネマズ日比谷 2023年7月9日(日)

封切り二日目。

席数89の【SCREEN7】の入りは八割ほど。

 

 

2020年公開の台湾映画〔1秒先の彼女〕のリメイク。

同作は劇場では観ていないものの
「WOWOW」では視聴しており、
その奇想天外なプロットと仕掛けの巧妙さに驚嘆した記憶。

今回は何故か「彼女」を「彼」に置き換えた訳だが、
そこはくせ者『宮藤官九郎』の脚本、
何らかの思惑があるハズとスクリーンを注視する。


ではあるものの、ストーリーはほぼ原作に忠実に進行。
「彼女」と「彼」の入れ替わりが最大で
それ以外の設定変更は若干。

前半部の『ハジメ岡田将生)』の現況や
日々の生活を紹介するのに長きを置いているくらいか。

とは言え、「空白の一日」が出現する条件に
舞台となる京都らしく日本的な要素を持ち込んだのは慧眼。
ちょっと牽強付会にも感じはするものの、
お笑いの側面もあり、なかなかの工夫と見る。


では性別を入れ替える必然性は何処にあったのか?

やや穿った見方をさせて貰えれば、
原作での何をするにも「一秒早い彼女」の『シャオチー』は
かなり鼻持ちならない自己中な性格付け。

冒頭の彼女の素行には、まるっきり共感できるエピソードが皆無。
詐欺に遭いかけた時にも「いい気味」と溜飲を下げたくなるほどの。

これをそのまま日本に翻案しては
演じられる女優さんがいないのでは、と。
若手であれば猶のこと。

それが男性なら、多少の難は目を瞑って貰えるとの思惑では?
もっとも、本作の『ハジメ』は、
そこまでイヤな奴には見えぬのだが・・・・。
かなりの手心を加えているとの見立て。


「一秒早い彼(彼女)」だけでは物語りは成立せず
「一秒遅い彼女(彼)」の存在が必須の
ハートウォーミングなラブストーリーは
初見では〔猟奇的な彼女(2001年)〕と近似の印象を持った(韓国映画だが)。

謎解きの要素や、
ヒロインの描写、相手役との関係性、
思わず涙が込み上げて来るエンディングを含めて。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


「一秒遅い彼女」の『レイカ』を演じた『清原果耶』が抜群の出来で、
観客の心をぐっと引き寄せる。

ワンテンポずれながらも、
一途で健気さを体現した彼女の起用無くしては
これだけの感銘を与えることは覚束なかった。


とは言え、原作に比べて感動が薄かったのは何故だろう。

単に二度目の体験なだけが理由ではない気がする。