封切り二日目。
席数240の【SCREEN7】の入りは八割ほど。
あの〔X エックス(2022年)〕の前日譚。
同作は劇場には行けてないものの「WOWOW」では視聴。
史上最高齢?の殺人鬼『パール(ミア・ゴス)』と、
彼女に追い回される『マキシーン(ミア・ゴス)』は
単に一人二役なだけでなく、
実は同じ(漠然とした)夢を持つことでも共通。
ラストシーンは、ある種の「親殺し」。
先に生まれた者を越えて行くための
儀式であったわけだが。
本作では、シリアルキラーとして『パール』が産み出された発端について語られる。
そして、タイトルの「X」の意味についても。
『パール(ミア・ゴス)』の生まれは1900年とした方が
計算がし易いか。
舞台となる1918年は「第一次世界大戦」が11月には終結し、
一方で「スペイン風邪」は1920年まで猛威を振るう。
彼女はテキサスの田舎町の農場で両親と三人暮らし。
結婚はしているものの夫は出征中。
身体の不自由な父親の介護と家畜の世話に忙殺される日々。
そんな中での僅かな楽しみは映画を観ること。
昂じて映画スターになる漠然とした夢を持つ。
しかし厳格な母親には抑圧にも近い躾を受け、
外出も思うにならず抑鬱感は溜まるばかり。
その憂さを晴らすように、小動物を殺しては
裏の湖に住む鰐(あの!鰐!!)に与えるのは
後の彼女の片鱗が垣間見え。
一家がなまじドイツからの移民なばかりに、
当時は敵国人と見做されぬよう、息を潜め暮らすのは
母親の『ルース(タンディ・ライト)』の方針。
とは言え、既に結婚もしているのに
実家に住まい、且つ実母からは自由も効かぬほどに支配され
束縛させる暮らしに甘んじているのは
なんとも解せぬところ。
が、おそらく母親も、同じようなコントロールを受けて育ったのだろう。
農場に縛り付けられ、自己の夢も諦めさせられて。
そうした憤懣が、あることを契機に一気に爆発する。
もっとも『パール』は手あたり次第の殺人者ではなく、
自身の夢を阻害する者だけを執拗に排除した帰結。
なので戦地から帰還する夫の『ハワード(アリステア・シーウェル)』はその対象とはなり得ない。
彼女の性欲も夢も全て肯定し、受け入れるのだから。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。
エンディングからエンドロールの中盤までは圧巻。
主人公のアップがアイリスアウトになるまで延々と続く長回し。
表情は次第に変化し、しかし彼女の時間は既にして止まってしまったことが示される。
おそらくこうした落とし込みをするための、
一昔目前の全盛期の{ハリウッド映画}を模した全体の造り。
「総天然色」とテロップを出して欲しいほど、
鮮やかな色調が惨劇の描写にも嵌っている。
そしてそれは、『パール』が夢見た世界でもある。