封切り二日目。
席数118の【シアター3】の入りは六割ほど。
本来は、そこに属する人々の全てが幸福になるべきシステムが、
時として牙をむくことがある。
なまじ狭い世間なばかりに
一旦コトが起きてしまうと
反目が表面化する共同体のありよう。
直近、わが国でも
核のゴミの最終処分場の選定に向けた文献調査の候補地として名乗りをあげるのにも、
二分する議論が巻き起こる。
過去をさかのぼれば、企業城下町での
公害に対する異なる態度は記憶に残るところ。
本作の舞台となった村では
家庭等から排出されるゴミの最終処分場の誘致が過去俎上に。
それに反対する家がなまじ少数だったばかりに
起こった悲劇は凄惨。
霞門村は風光明媚ではあるものの
これといった産業は無く、
誘致が決まれば補助金も出よう、
加えて雇用の期待も。
人口の流出は止められ財政も潤うとの目算の一方、
土壌汚染による農業への影響は懸念。
更には候補地が村の鎮守の上の山とは
何とも罰当たりなハナシ。
にもかかわらず、反対派は次第に追い詰められ
村八分に近い扱いを受け、
『片山優(横浜流星)』の父親は
苛めの首謀者を殺害、
自身の家にも火を放ち自殺。
そのこともあってか、
反対派の活動はなし崩し的にシュリンク、
処分場は開所。
『優』はしかし、村から出ることはせず、
自分達親子を不幸に追いやった処分場で働き始める。
犯罪者の子供との烙印を押され、
村の中でも底辺に落とされる差別を受けながら。
そうした境遇は個人にマイナスの影響しか与えないことは
想像に難くない。
快活だった主人公は長ずるにつれ無口で消極的に、
ほう髪に無精髭は伸び猫背になり
目の輝きも失われる。
ギャンブル依存になった母親が作った多額の借金返済のため
今日も理不尽な扱いを受けつつ、
時として不法投棄の片棒を担ぎながら日銭を得る
半分死人のような日々。
そんな折、
幼馴染の『美咲(黒木華)』が東京から戻り
処分場で広報として働き始めたことから物語は動き出す。
村で権力を振るう村長一族の家系は、
陰に日向に村に大きな影響を与え
その行いは時としてエスカレーション、
今回の事件の発端でもある。
それが公の為なのか
私欲によるものかは不明も
実はその家族内にも確執があることは
次第に明らかに。
『美咲』の弟の『恵一(作間龍斗)』は
村のくびきから逃れたくてしようがない。
他方、『優』を盛り立てようとする『美咲』は
都会での生活に疲れ果ててしまった過去があり、
村から出ることイコール幸せを掴むことではない
世間の事情も対比して提示され。
そうした複雑系の中で、
主人公は以前の輝きを取り戻すも
それが永続ではないことは
冒頭に提示される「一炊の夢」の故事からも明らか。
とは言え、「邯鄲の枕」は
全ての人に共通なハズだが・・・・。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。
終幕で示されるのは、
『優』の父の死は、村全体の見えない意志による
スケープゴートであったこと。
それにより最大幸福が得られるのであれば
多少の犠牲は致し方なしとの身勝手な思惑。
日本は加害者家族がもっとも生きづらい国と
言われているとも聞く。
それが村の様に狭い世界であればなおのこと。
親は親、子は子との線引きは
難しい考え方なのだろう
「親の因果が子に報う」とのいいならわしすらあるのだから。