RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

キリエのうた@TOHOシネマズ川崎 2023年10月15日(日)

封切り三日目。

席数142の【SCREEN1】の入りは三割ほど。

 

 

路上Liveで日銭を稼ぎ半分ホームレスのような生活をする『キリエ/小塚路花(アイナ・ジ・エンド)』と、
目を掛けてくれる男の間を渡り歩いて暮らす『イッコ/一条逸子/広澤真緒里(広瀬すず)』の二人の人生が
新宿の路上で交差したしたことから始まる数奇な運命の物語り。

『キリエ』はある出来事がトラウマとなり、
歌うとき以外はほぼ声が出ない状態。

『イッコ』は嫌っていたにもかかわらず
自身の母親や祖母がそうしていたように
「女」を使い糊塗を凌ぐ。

二人の生き方を大きく曲げた天変地異は
ここに象徴されるように
多くの他の人々の人生をも変えてしまったことは
我々も知るところ。


最初は場所も時間も異なる点のエピソードが
バラっと展開され
頭の中で整理するのにてこずるのは事実。

現代の東京、
少し前の大阪、
それより少し後の帯広、
そしてずっと以前の宮城、と。

しかしその点が次第に触手を伸ばし、
線として繋がる構成の見事さに唸り、
浮かび上がって来た事実に落涙。

情より法が優先されることで
却って不幸がもたらされる現実もちくりと入れ込み
情感のある脚本に仕上がっている。

また小物の扱いも特徴的。
大小二つのアイテムが、
主要な二人を繋ぐ鍵としてさらっと使われる巧みさ。


三時間近いほぼ1/4が
歌のシーンの体感。
そのため音の良い劇場で鑑賞すべきとの思いは強い。

彼女の声は〔スワロウテイル(1996年)〕での『グリコ(CHARA)』のそれにも似て、
ハスキーで骨太、時としてかそけき。
バレエを踊るシーンでは〔花とアリス(2004年)〕の『アリス(蒼井優)』を想起させ、
元よりセルフオマージュの多い監督だしなとの感想はぬぐえず。


『アイナ・ジ・エンド』は、
今回が初の本格的な演技と思われるが、
変化のない表情と訥々とした喋りが逆に奏功。

小学校の教師を演じる『黒木華』は
善良な若い女性役では右に出る者がいないのでは。

仲立ちとなる
やや煮え切らない役柄の『松村北』も悪くはない。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


水越けいこ』『大塚愛』『樋口真嗣』『カールスモーキー石井』もクレジットされており、
いったいどこに出るの?と
目を皿のようにして探してしまった。