封切り二日目。
席数118の【シアター3】の入りは三割ほど。
本編上映前の予告編に混ざって
「長岡市」のPVが流される。
「山古志村」の「闘牛大会」。
日本酒や海の幸、山の幸。
松原の景観。
そして郷土の偉人は『山本五十六』と
本作の主人公『河井継之助』。
まぁ、タイアップとしては常套手段と、
善し善しと思っていたのだが、
本編を観、エンドロールも確認して呆然とする。
これと言ったヤマも無く、
感動するほどのオチも無く、
まるっきりの{ご当地映画}の趣き。
例えば〔大コメ騒動(2021年)〕であれば、
ご当地×エピソードを上手く処理したわけだが、
今回にはそうした点は見つけられず。
唯一印象に残ったのは、
妻を演じた『松たか子』の美しい踊り姿だけとは、
かなり残念な内容。
「明治維新」は「薩長」の260年を経た「徳川」への復讐であり、
要らぬ喧嘩を吹っかけ、物量頼みの殲滅戦を展開し怨念を晴らした経緯や、
今まで高官に押さえ付けられて来たことに対す反発が根底にある
幕臣への尊大な態度を示したことは画期的。
また主人公の、合理的な思考や
巨視的な先見性を幾つかのエピソードで盛り込んだことも素晴らしい。
こうした人物が政権内に居れば、
どれほど人民の側に立った為政を行ってくれたろう、と。
一方で、本作の造りでは、
そうした合理性を持ちながらも、
結局は武士としての義に囚われ
身を亡ぼしてしまう哀しみを
どれだけ伝えられただろうか。
戦闘シーンも淡々と流してしまい、
挿話間の繋ぎも散発的。
冗長な場面が多く、ストリーテリングも
あまり感心できず。
要は脚本がなっていないことで、
物語全体が浮ついてしまっている。
主人公の父親を演じた『田中泯』、
母親を演じた『香川京子』等、
芸達者を揃え乍ら、その味を生かし切っていない演出も辛い。
もっとも享年41歳の主人公を
『役所広司』が演じるのにも無理はあるのだが。
まぁこれは余人がおらず、致し方無しとの側面か。
評価は、☆五点満点で☆☆☆★。
それにしても『松たか子』の踊る姿は美しかった。
背筋は伸び、指先まですっと神経が行き届いている。
「名取」とはこれほどのものか、と
改めて感服する。