RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

ワイルド・ローズ@チネチッタ川崎 2020年6月27日(土)

封切り二日目。

席数154の【CINE9】の現在のキャパは77で、
その六割ほどは埋まっているか。

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所謂{A Star Is Born}もの。
天賦の才を持つヒロインが艱難辛苦を乗り越え栄光を手にする。

しかも本作の場合、誰も死なず、且つ
出て来るのは皆、良い人ばかり。
唯一、感情移入できない主人公を除いて。


ありきたりな成功譚に堕しないために、制作サイドは
大きく二つの仕掛けを用意する。

一つは脚本の冴え。

テンポの良いオープニングから、もう驚かされっぱなし。
彼女の今の環境で、先ず?!
そこを出た時に更に驚きが待ち、更には
最初に行った場所で!!
次に向かった所では輪を掛けて!!!
なんちゅ~展開じゃ。
それでいて、主人公の境遇を過不足なく伝えきる。

その後、紡がれるエピソードの流れは、
観る側の予想や期待をことごとく裏切り続ける。

ありがちなお約束を全て外しまくり、
おいおい次は一体どうなるんだい、と
興味の深化が止まらない。


二つ目は先に挙げた『ローズ(ジェシー・バックリー)』の造形。

明確に自身の年齢を示唆することはないけれど、
会話の手掛かりからは二十代半ばか。
それでいて二児の母。

なまじ自他共に認める才能があるため、それを開花させたい。
一方で、シングルマザーの子育てと生活の糧は必要。
それをどう両立させるか?

いや、要はできてないのである。
夢追い人のまま、年齢だけを重ねてしまい、
まだまだ子供のままで自身の母親に甘えまくる。
自分が取った行動の責任をまるっきり取れていない。

それが観客からは、あまりに自己中に見えてしまう。


成功と共に、本人の人間的な成長描写も
本編の要素。

観終わった後味も極上で、百分ほどの尺ながら
高濃度な一本


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。


カントリー歌手の『ローズ』を吹き替え無しで演じたという
ジェシー・バックリー』がまた絶品。

実年齢も近いだろう設定の主人公の
並外れたワイルドさをあますところなく表現。

そう言えばこの人、同じくショウビズの世界を描いた
〔Judy〕にも出てるんだねぇ。