封切り二週目目。
席数107の【CINE1】の入りは四割ほど。
カテゴリーとしては{ハードボイルド}の範疇に入るのだろう、
それも古いタイプの。
事件が起き、探偵は走り回り、やがて謎が全て明らかになる。
ジャズ、酒場、殴られて意識を無くす主人公(でも、けして
殺されはしない)もお約束通り。
が、熱湯で入れた紅茶を好んだり、ヤクをやったりと
ややずらした設定も随所に見られる。
その最たるものが、本人が「チック」と表現する自身の症状。
突発的な体の動きが繰り返され、汚言症まで。
一方で並外れた記憶力があり「サヴァン症候群」に
近いんじゃ?とも思える。
特異な造形は善しとして、本作の一番の問題点は
その語り口の悪さ。
中盤部までは何が核心なのかすらも
まるっきり理解できない。
主人公はあてどなく右往左往し、頭を抱え込むのみ。
観ている側もそれは同様。
バラ撒かれたピースが余りに雑に過ぎるのがその主要因。
どう再構成すれば一つに纏るかがさっぱり。
オマケに人物と名前が一致していない時点で
会話の中だけで当該者に言及するのも
それに拍車を掛ける。
が、恐ろしいことに、伏線は幾つも張られ
手がかりは観客の目前にきちんと明示され、
最後には綺麗に回収。
事実を意図的に隠す等の禁じ手を
けして使っているわけではない。
要は脚本の構成が独りよがりに過ぎるのが
その要因なわけ。
原作の時代設定を意図的に変えたとも聞いている。
確かに1999年よりも1950年代は
黒人への差別はより激しかったろう、なので
物語りの鍵となる事実に対しての感じ方も
映画の方がよりリアル。
組織的な腐敗の蔓延については言わずもがな。
他方、先に挙げた主人公のキャラクターはイマっぽく、
往時からは遊離してしまっている。
情報が共有され難い時代には、偏見を超えて
存在することすら難しかったのではないか。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。
それでいて本作は、抗いがたい魅力にも満ちている。
その源泉は、主要な登場人物の多くが
仲間を思いやる優しい心根に満ちていることと、
演じた役者達の良さによるところが大。