RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

メタモルフォーゼの縁側@チネチッタ川崎 2022年6月19日(日)

封切り三日目。

席数244の【CINE6】の入りは四割ほど。

 

 

一口に「BL」と言っても、
描かれる中身は広範。

例えば「BOOKOFF」の売り場では
よしながふみ』も(今でも)「BL」にカテゴライズされている。

西洋骨董洋菓子店〕などは、多少の片鱗が見えるくらいも
〔執事の分際〕あたりでは、かなりハードな描写もこれありで。

まぁ、次第に仄めかす程度の表現の仕方になって行くわけだけど。


で、本作、件の「BL」を鎹に、
随分と歳の離れたJKと老婆が友情を結ぶ。

主演はリアルJKの『芦田愛菜』。
役柄は自分に自信が持てない引っ込み思案の、
世間に数多居る少女。

それが、おそらく六十ほども歳の差がある『雪(宮本信子)』との交流を経て、
大人への階段を登る脱皮をする。

そのために用意されたエピソードは何れも秀逸。
勇気を出しても、なかなかに思い通りにならない現実が
まことに真実っぽい。

そうした通過儀礼を経て、少しずつの成長をするのだが。


それにしても、彼女が演じる『うらら』の態度は
傍から見るとかなり過敏。

以前よりも「腐女子」は市民権を得ていると思うのだが、
そうでもないのかしら。

コミックを買う時にしろ、それをカフェでテーブルの上に置く時にしろ、
周囲への気の使いようは尋常ではない。

一方、同好の士が多く蔓延る「乙女ロード」近辺では、
そうした気遣いは無用のよう(笑)。


宮本信子』の演技については論を待たず、他方
〔星の子(2020年)〕に続きリアルな年代を演じた『芦田愛菜』は
やはり頭抜けた力量と感じる。

とりわけ、難しいと思われる泣きシーンでも、
その自然さに殊の外感心する。

また喜怒哀楽の表現が秀逸で、説明や科白に頼らずとも
内に秘めた感情が皮膚や服装を通しても外に発露するのは素晴らしい。

彼女を観るための一本と言っても過言ではナシ。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


劇中で提示される「BL」コミックのストーリーや科白が
現実の二人の関係性に照射される等の仕掛けも上々の出来。

物語の流れから、そうなる予感は既にしてあるも、
実際に場面として目の当たりにすると
爽快感さえ覚えてしまうのは不思議。

純粋に好きな趣味で繋がり合う交流が
なんとも温かく微笑ましい。