封切り三日目。
席数532の【CINE8】の入りは八割ほど。
パイロットが窮地に陥った時に、
天啓のように降って来る言葉がある。
何れも主人公を危機から救うファクターとして機能する、
ある時は「フォースを使え」、
またある時は「ロシア語で考えろ」。
それが今回は「考えるな、動け」で、
実はこれは、才能もさることながら、
血の滲むような反復練習の結果として、
脊髄反射のように体現されるもの。
その訓練過程が見どころの一つ。
同時にそれを側面支援する最新の技術にも驚嘆するのだが、一方、
人間臭い絆を構築するエピソードの積み重ねとしても面白い。
冒頭のシークエンス、
『ピート(トム・クルーズ)』が極超音速のテスト機「ダークスター」で
マッハ10を目指す一連の導入部で思い出させられる人物がいる。
それは人類で初めて、公式に音速を超えた男『チャック・イェーガー』。
映画〔ライトスタッフ(1983年)〕でも語られたその雄姿と
かなり重なる描写が多々。
彼はその後、「USAF TPS」の校長を務めるなどとの経歴も併せれば尚のコト。
ドッグファイトの場面は勿論だが、
本作のもっとも優れた点は、その脚本の造り込みにある。
前作の設定を上手く引用しながら、
それを肝心なシーンに生かす
所謂、「伏線」と「回収」の手際の良さ。
昨今では
どう見てもストーリーの中の一つのパートに過ぎないにもかかわらず、
褒めそやす言説のために便利に用いられ過ぎているこの二つの単語。
ところがここでのそれは、本当に何気ない、
ともすれば忘れてしまいそうな科白の中に、
ラストの起死回生に繋がる重要な要素として忍ばせてある。
加えて、今もって主人公を苦しめている
前作での因縁を引き継ぎながら、新たな未来への展望を示す装置として。
見事ととしか言いようがない。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。
戦闘に於いても、自動化やAI化が進み、
やがてパイロットは不要になるだろう、とは
いみじくも劇中で語られている科白。
その養成には膨大な時間と費用が費やされ、
それ故、大事に扱う姿勢が顕著なのはアメリカらしい流儀。
が、不思議なことに、
SF映画でもパイロットの存在は必要不可欠。
自動運転車が実現する世界は早く来て欲しい希望はありつつ、
ドラマを紡ぐ点においては、人の存在が消えることは今後も有り得ぬだろう。