RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

のぼる小寺さん@109シネマズ川崎 2020年7月4日(土)

封切り二日目。

席数118の【シアター3】は現状では半分の案内なので
実質59席。客の入りはその四割ほど。

客層はW主演の二人を目当ての、若い女性、ちょっとおぢさんが
ほぼほぼ半々といったところ。

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『小寺(工藤遥)』さんは、壁をただひたすら登る。

中学から始めたと言うボルダリングの腕前がどの程度なのかは
良くわからない。

体育のバレーボールでは球を顔で受けるほどの運動音痴。

進路希望調査には「クライマー」と書いてしまう天然っぷり。

立膝をしてラーメンを食べる行儀の悪さ。

時として哲学的な科白を吐き同級生の目を白黒させる。

しかし、目の前の凹凸には真摯に向き合う。


そんな彼女に熱い視線を向ける四人の男女。

中でも『近藤(伊藤健太郎)』のそれは、ちょっとストーカー染みた、
恋愛感情も帯びた憧れに近いもの。

最初は声も掛けられずただ見ているだけだったものが、
次第に言葉を交わし触れ合うことで
今の自身を省みるようになる。

『小寺』さんの生真面目な態度が触媒となり、
四人の気持ちが少しづつ変化して行く好循環。


振り返ってみれば、自分も中・高と
特に何をするでもなく多くの時間を無為に過ごしていたとの記憶。

突然、外から何かがやって来て、
自分や毎日の生活が一変するかもとの淡い期待を持ちながら。

しかし何事もなく、六年間は走馬灯のように過ぎて行った。

が、本作で描かれる様に、
実は変わるきっかけは至る処に在り、
ただ自分が気づかなかっただけなのかもしれない。


その結果としてのラストシーンも、余韻の残る
ココロがふわっと温かくなる嬉しい描写。

欲を言えば、出演者が売れっ子過ぎて訓練に時間を割けなかったろう、
肝心のスポーツシーンでイマイチ迫力を感じられない点か。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


桐島、部活やめるってよ〕では、
最後まで姿を見せない『桐島』が台風の目の様に校内をかき回す。

一方、本作での『小寺』はしっかりと実体化し、
意図せずに見せる自分の姿勢で周囲を変えて行く。

特に制作サイドには前作への意識は有ったろう、
計五人の男女の心理や日常の変化をオムニバス的に描く点でも共通している。