RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

さがす@チネチッタ川崎 2022年1月22日(土)

封切り二日目。

席数244の【CINE6】の入りは四割ほど。

 

f:id:jyn1:20220124072700j:plain

 

『原田智(佐藤二朗)』は経営していた卓球教室がつぶれ、
借金にもあえぎ、今では日雇いの労務で糊口を凌ぐ日々。

そんな彼がある日、娘に
「指名手配中の連続殺人犯を目撃した。それを警察に告げ
300万円の懸賞金を貰う」と告げたまま姿を消す。

父を捜す娘の『楓(伊東蒼)』だが、
警察に駆け込んでも真面に取り合って貰えない。

手配師から聞き出した作業現場に赴くと、
そこには父の名を騙る見知らぬ男が。

しかし彼こそが、殺人事件の指名手配犯
『山内照巳(清水尋也)』本人だった。

それに気付いた『楓』は
自身で行方不明になった父親を捜す決心をする。

果たして彼女は、父親を見つけ出すことができるのか。


兎に角、脚本の練り込みが素晴らしい。

前半部で布置された伏線が、終盤で綺麗に回収され
疑問を挟む余地も無い。

モンタージュの構成も優れており、
余分な説明やシーンは一切見当たらない
メリハリの付いた構成。

まだ長編三本目の『片山慎三』監督の技量を
十全に感じさせる一本。


とは言え、瑕疵とも感じる疑念や疑問は幾つか散見。

その最たるものは、当初の自殺に見せかけた殺人。
ALSの患者が果たして、あれだけの仕掛けを自分で整えることを
警察は疑問に思わぬのだろうか、と。


次いで、最後のシークエンスでの娘が取った選択の説得力について。

それが正義感から出たものでないことは
従前の彼女のエキセントリックな行動からも明らか。

人を人とも思わぬ、周囲の親切に仇を以って返す態度は
共感をまるっきり拒絶している人物造形。

父親が居なくなり、自分が捨てられたと感じたことの苛立ちの照射としても、
度が過ぎた行動にしか思えぬ。

亡くなった母親への思慕の情のエピソードを事前にまぶして置けば
もっと異なる感慨を持ったかも(ほんの一シーンほどはあるのだが・・・・)。

介護をするのがほぼほぼ父親だったこともあり、
思いの転用がどうにも空回りしている印象。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


劇中で語られる
「死にたいと言っていて、会ってみたらホントに死を望む人間は一人もいなかった」との科白は
某事件の主犯の供述そのまま。

シリアルキラーである裏の顔を隠し、
「死にたい人間を殺してあげることは人助け」と嘯く連続殺人犯の言い草には
怖気をふるう。


しかし危険を賭してでも、犯人を追う『楓』の行動の裏にはあるのは、
一つ父を探し出すこと以外の理由もあったはず。

それがタイトルの「さがす」の意味に二重に込められ、
哀切極まりないラストシーンへと繋がって行くのだ。