RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

TITANE/チタン@109シネマズ川崎 2022年4月2日(土)

封切り二日目。

席数89の【シアター8】の入りは六割ほど。

 

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少女は交通事故で頭部に損傷を負い、
手術で右側の頭蓋骨にチタンプレートを嵌められ、
その傷痕は長じてからも歪な外見。

それからだろうか、彼女が車に対し
異常な興味を示すようになったのは。

いや、元々の事故ですら、
自身が車中で興奮状態にあったことから起きたのも否定はできず。


そんな『アレクシア(アガト・ルセル)』の現在の職業は
煽情的なムーブと優れた容姿も相俟って男達からも人気を博す、
車上で踊るダンサー。

一方で、情欲が募った相手を刺殺する
シリアルキラーの裏の顔を持ち
その手に掛かった者は男女を合わせ複数名。


が、ある晩、
『アレクシア』は車と性的な関係を持ち
望まぬ妊娠をしてしまう。

ヒトならざるモノとの交接の結果が
何れも悲劇を招くことは
過去から幾度となく描かれてはいるが、
本作ではどのような赤子が産み落とされるのか。


しかし幾つかの衝動的な殺人の果て、
彼女は今では指名手配犯として追われる身。

身を切る痛みに耐え外見を変え、
消防士の『ヴィンセント(ヴァンサン・ランドン)』の息子『アドリアン』に成り済まし
庇護されるが、
次第にその体は妊婦の特徴を大きく示すようになり・・・・。


何とも複雑な構図が絡み合う一本。

主人公は性的な興味の面でも
外見を改造する点でも
既存の枠を軽く飛び越える。

ジェンダーなる定型的な単語では
とても一括りにできぬほど。


加えて、愛情の発露には
必ずしも血の温かみが必要無いとの
寓意についても同様に。

中途、冗長なエピソードはあるものの、
ラストシーンで観客には
それらの全てに満足の行く回答が示される。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


無機物との間にできた子供は、
ある意味、尋常ではない存在。

 

『ヴィンセント』と『アレクシア/アドリアン』の関係性、
そして産み落とされた子供には
新約聖書」で描かれた構図と
同様の物語りを見てしまう。

勿論、それを思わせる科白は
劇中にも周到に、予言の様に用意されている。