封切り三日目。
席数542の【SCREEN5】の入りは三割ほど。
冒頭、主要な四人の登場人物が紹介される。
ただこの時点では、各人の関係性はもやっとして杳とは分からない。
『森宮壮介(田中圭)』と『優子(永野芽郁)』の父娘は
随分と仲が良さそう。
どうやら二人きりの暮らしらしく、父親は食事を含め
甲斐甲斐しく世話を焼く。
が、娘の方は父親を「森宮さん」と呼ぶなど
二人の間には、何か背景がありそう。
『梨花(石原さとみ)』と『みぃたん(稲垣来泉)』も
やはり二人きりの生活。
夫=父親不在の理由はおいおい語られるも、
互いに血縁関係はなく、しかし継母は娘を溺愛。
ただ、その愛情は一風変わっており、
母親は家事はからっきし。
その分、遊びや洋服で娘を甘やかす。
映画の前半~中盤、二組の親子の物語りが並行して描かれる。
鑑賞者は勿論、その関りを想像しながら画面を注視するのだが、
それが交わった時に、思わず、アッと声を上げてしまう。
時制を意図的に曖昧にしたりを手始めに
幾つかの目くらましを使った仕掛けが奏功する瞬間。
原作での描写のほどは判らないが、
映像的には極めて秀でた構成。
監督の『前田哲』と脚本の『橋本裕志』は
〔こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話(2018年)〕でも組んでいるが、
その息の合ったパートナーシップが本作でもいかんなく発揮される。
時にありきたりの科白や所作が、後々
重要な伏線として効き、しかもきっちり回収される流れも素晴らしい。
一人の少女が、奔放な継母に振り回されながらも、それに臆することなく
まっすぐに育つ成長譚。
もっとも、その継母も、自身の都合で振る舞っているのではなく、
娘の幸せを第一に慮っているのだとの設定は何とも泣かせる。
また娘を託された継父達も、掌中の珠を扱うように
彼女を愛しむ。
この複数の無条件に注がれる愛情が、この不寛容な時代には尊く清々しい。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。
ただ惜しむらくは『梨花』の心根が判るシーンでは
言葉による説明に頼り過ぎたことで、
ここをよりモンタージュのみで造り込めれば
更に秀でた一本として昇華しただろう。