RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

ライダーズ・オブ・ジャスティス@チネチッタ川崎 2022年1月22日(土)

封切り二日目。

席数284の【CINE5】の入りは四割ほど。

 

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タイトルの「Riders of Justice」は何のことかと思ったら
主人公達と敵対する犯罪組織の名称。

”正義”を名称にかざす割に、
その実態は不法者の集団。

平和な国との印象を勝手に持っていたデンマークだけど
銃の大量所持といい、このような組織の存在といい、
思いの外、治安には問題があるのかしら。


妻が列車事故に巻き込まれて亡くなったとの知らせを受け、
赴任地のアフガニスタンから急遽帰国した『マークス(マッツ・ミケルセン)』だが、
その悲しみをどこにぶつけて良いのかもわからず、
やり場の無い怒りに苛まれる。

それは娘の『マチルデ』も同様。
自分の自転車が盗まれなければ、
自家用車が故障しなければ、
戦地の父親から国際電話が掛かって来なければ、と
不幸の連鎖の原因を追い求める。

が、女性は強し。
哀しみの中にも、前を向くため
心理療法を受けることを望むが
父親は頑なにそれを拒否する。

そんな折、同じ事故車両に乗っていたものの九死に一生を得た
『オットー(ニコライ・リー・カース)』が彼の元を訪い、
これは人為的に起こされた事件との疑念を数々の傍証と共に告げ、
それを信じた『マークス』は
主犯と目されるギャング組織「Riders of Justice」への復讐に動き出すのだが
事態は予想だにしない方向に転がり出す。


一風変わったリベンジもの。
他の復讐譚とは異なる設定が幾つも。

先ずは、意趣返しの対象の特定に
確証がないのが最大の特徴。
見ず知らずの他人から持ち込まれた
状況証拠のみがよすがとなる。

それに主人公が飛びついてしまったのは、
妻を亡くした空白を埋めるサムシングを持求めていたからか。


彼を助ける『オットー』とその仲間たちは皆々文系で
リサーチの役には立つも、腕っぷしはからっきし。

オマケに皆々が過去の体験によるトラウマを抱え
頼りになるんだか、ならないんだか。

時として『マークス』からの八つ当たり的な暴力を喰らい、
それでも協力を惜しまないモチベーションが何処にあるのか、
傍目には凸凹にしか見えない
何とも危ういグループなのはその最たるところ。


『マークス』は現役の軍人とのマッチョな設定も
ガンアクション等の場面は過少。

尺のほとんどを、疑似的にファミリーを形成する
仲間内の会話に割いており
その中で現代的な病理や社会が抱える矛盾が浮かび上がる。

一つの復讐劇にとどまることなく
それらを寛解する過程をも描き出すのだが
明らかになったコトの真相はあまりに皮肉で
鑑賞者は唖然としてしまう。

もっとも、説得力のある傍証でぐいぐいと押しまくる
スピード感満載の脚本に、目くらましをされているのだが。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


目に見えることだけが真実ではなく、
世間は絡み合った複雑系で構成され、
確率的には否定されても
風が吹けば桶屋が儲かる」的な連鎖は
現実には個々人の与り知らぬところで
起きている可能性も提示される。

一人の幸福が他の人々の不幸を呼び込む悲壮な出来事は
思いの外、そこかしこに偏在をしているのかもしれない。