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好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

燃えよ剣@チネチッタ川崎  2021年10月16日(土)

封切り二日目。

席数407の【CINE11】の入りは四割ほど。

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それにしても本作は、最初から最後まで
濃密な様々な死の描写に溢れている。

もっとも『近藤(鈴木亮平)』『土方(岡田准一)』『沖田(山田涼介)』の三人も
皆死んでしまうのだし、
それ以外の主要な登場人物達も
内紛の為に惨殺や切腹といった始末になるのだから当然か。

実際の「新選組」も戦闘で亡くなるよりも
隊規にふれての死が多かったとも聞く。


近藤勇』『土方歳三』の享年は34歳。

前者は懐の深い愛嬌のある人物とされ、
本人は望んだのかそうではないのか、
大将として祭り上げられる。

彼が去って行く最後のシーンは、
その頸木からようやく解き放たれた心やすさと
一種の諦観さえ透けて見える。

もっとも投降後の処遇について
自分と同じだけの度量を官軍に期待したのは、
あまりに甘いとしか言いようがないけれど。


一方の『土方』は冷徹な策士、或いは
非情な人切り、『近藤』への思慕、
幕府直轄の農民であったとの誇りを組み合わせた複雑な造形。

思想の有無は定かではないけれど目指す理想は有り、
そのためなら阻害する周囲は全て薙ぎ払う心算。

ある意味、表裏が無く、判りやすいともいえる。


新選組」は毀誉褒貶やその評価が、
時代によってかなり変わるのも特徴的。

自分が物心ついて以降暫くは、
維新の志士を弾圧した殺戮者の集団との決めつけが多かったと記憶。

しかし直近では、明治維新そのものが
薩長によるクーデター且つ、
その後の戦闘では不要な混乱を招いたとの表現も多くなり、
映像にしろ文字にしろ
ダークヒーローの面は残しつつ、
極めて「悪」との断定は無いように思うが、どうか。

新選組!(2004年)〕での描かれ方も相俟って、
よりその思いを強くする。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


二時間半の長尺を使いながらも
盛り込むエピソードが多すぎ、
映像では語り切れなかったのは至極残念。

それに対して監督/脚本の『原田眞人』は
ノローグにも似せた会話を多用することで補う工夫をする。

それら幾つものシーンは不自然さを感じず、
要点も整理・理解できるなかなかに良い仕掛け。


もっとも、歴史的用語の頻出や、
主要な人物、或いは時代の流れが頭に入っていないと
そもそもの大枠を掴み切れない不都合は有るのだが。