RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

首@TOHOシネマズ川崎 2023年11月23日(木)

本日初日。

席数158の【SCREEN3】の入りは七割ほど。

 

 

本能寺の変」を題に取り、
ほぼほぼ実在の登場人物たち、かつ
史実に近い大まかな流れは踏まえつつ
共に自在に動かすことで
北野武』らしい暴力と諧謔に満ちた作品に仕上げている。

もっとも、エンドタイトルでも分かるように
はなから海外展開を見据えたであろう一本。
シーンの端々にもそうした片鱗が垣間見え、
やや鼻につくのも確か。

またタイトルバックでも示唆されるように、
人間の首が飛ぶシーンは多々。
「R15+」の設定を越え
生臭さが画面から漂って来そう。


物語の発端は『織田信長加瀬亮)』に重用された
荒木村重遠藤憲一)』が主君を裏切ったこと。

武功とともに衆道の関係もあったことから、
愛憎の度合いは深く、執拗に追われるようになる。

もっとも本作に於いては
『村重』と『明智光秀西島秀俊)』も同じ関係があったとし、
男女間の惚れた腫れたと同じか更に強い感情が
男同士で繰り広げられ、
それが政局に大きく影響して行く。


『信長』の常の発言
「自分の跡目は親族に限らず、最も功のあった者に譲る。
(だから)身を粉にして働け」との言が虚偽だったことが露見したことが
「変」への流れにつながったとする。

本能寺の変」の契機については諸説あれど、
ここでは『羽柴秀吉ビートたけし)』が絵図面をひき、
千利休岸部一徳)』が手助けをし、
それに『光秀』が上手く利用された、との筋書きを作る。

当然 とんでも ではあるものの、
はなしだてのアイデアとしてはすこぶるユニーク。
なにせそこには、天下取りの野望と、
男同士の愛情や嫉妬が絡むのだから。


またここでの『信長』は
過去に類例がないほどのエキセントリックさ。

演じる『加瀬亮』の狂気の度合いも激しく
海炭市叙景(2010年)〕での『晴夫』を上回る苛烈さ。


主要な人物のほとんどが
他人を出し抜き、裏切ることをなんとも思っていない。

それは主君と家臣、兄と弟でも同様で、
自身が天下を取るためであれば、
邪魔者は全て排除しようとの勢い。

けだし物語り的も、
同時代の人たちの実際も
そうだったのではないかと思わぬでもない。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


軍功や生死の証として、
多くが「首」を取ることに執心するなか
異なるエビデンスを求める人物が一部に居る。

ある意味、合理的な考えではあり、
彼らの先々のスタンスを勘案すればもっともな造形。

とりわけ、ラストシーンで
(タイトルを含め)今まで重要なアイテムとして来た「首」の存在を
あっさりとひっくり返して見せる
監督・脚本の『北野武』の仕掛けにも感心する。