RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

ドント・ブリーズ2@TOHOシネマズ川崎 2021年8月14日(土)

封切り二日目。

席数147の【SCREEN2】は一席おきの案内なので
実質73席。
それが満員の盛況。

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冒頭のシーン、燃え盛る家から逃げ出して来た少女が
道路に倒れ伏す。

それから八年後、彼女は何故か、
あの「盲目の男」と一緒に、山奥の一軒家で暮らしている。

おそらくは「男」が少女を救い出し、
亡くした自身の娘の代替として愛しんでいるのだろう、
それもご丁寧に『フェニックス(マデリン・グレイス)』と、偽りの名を与えて。


考えてみれば、前作では「盲目の男」の男はけして主人公には非ず。
あくまでも彼の家に侵入した三人組の物語りであった。

その脱出の過程で観客は「男」の過去も知るわけだが、
それは復讐に囚われた恐ろしい記憶。

しかし、一連の事件の過程で、その妄念は
憑き物が落ちたとも見るべきか。


一方で、「男」は何故か、『フェニックス』に容易に街に出ることを許さない。
学校にも通わせず、あまつさえ日々厳しいトレーニングを課す。

その意図が那辺に有るのか、我々にはまだ解らない。


ところが或る日、それを予期した様に複数人の男たちが家に侵入し
少女を連れ去ろうとする。

前作では圧倒的な地の利も有り、無敵を誇った「男」も
今回はどうにも動きにキレがない。

加齢や少女という重し、
或いは自身にとって絶対的優位である暗黒の世界に引き込めないとの
頸木はあろうが。

また今回の侵入者はプロ集団とのレベル差はあるだろう。

他方、タフネスさについては、変わらず健在。
殴られても切られても、ゾンビさながら立ち上がり抵抗を止めない。


ただ奮闘虚しく、彼女は連れ去られ、そこから物語の第二幕、
奪還劇が始まる。

が、その場所は「男」にとっては未踏の地。
絶対不敗の場所である自宅ででさえこれほどの苦戦を強いられたのに勝算はあるのか。

ましてや、その場所までどうやって辿り着くのか?

そこで、幾つかの伏線が回収されるのだが、
まぁこれは感心よりも、にやりと笑って済ます流れか。


その過程で、侵入者達の意図と、
『フェニックス』の過去も明らかになり、
特に前者は驚愕の内容も、
「男」の行為を正当化するには十二分の補強材料として機能。

それもあり、彼のミッションの成否を、手に汗握りつつ
注視することになる。

語り口の強引さはあるものの、
脚本は練られており、大きな破綻を感じさせず、
ラストシーンまで、かっちりと疾走する。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


シリーズ的なタイトルを提示しつつ、
前回ではあくまでも脇役であった「男」を
主役に据える奪胎を行っているのは、
それほど強いキャラ造形に成功したことの所産だろう。

上手く引き継ぐ一方で、
「強く息をしろ」との真逆のシーンもあるわけだし。

また「男」の名前が
『ノーマン(スティーヴン・ラング)』なのも、何とも示唆的だ。