封切り二日目。
席数118の【シアター5】の入りは
七割ほど。
「ワシントンハイツ」と聞くと
占領下の、今でいえば代々木公園一帯に在った
兵舎/家族用居住宿舎などの在日米軍施設を想起してしまう年代です、
すいません。
当然、本作の舞台である
ニューヨークはマンハッタン北部に位置する地域が本家なのね。
今ではドミニカからの移民(合法/非合法を問わず)が多く住み、
一時期は犯罪の多発地帯も
今では所謂シャッター街に近い空洞化も起こっている、と。
加えて、長らく米国に住んでいても、中南米からの移民に対する蔑視は厳然とあり、
それがテーマの一つにもなっている。
もう一つの主題は先に挙げた、荒む街そのものからの
閉塞感からの脱却と、
反対に内側から活性化して行こうとの想いとの葛藤。
どちらも、日本の地方都市にも見られる現象で、
洋の東西を問わず近似の問題を抱えているんだなぁ、と
考えたり。
スタイル自体は{ミュージカル}にカテゴライズされようが、
自分の好きなオールドスタイルとはややタイプを異にしている。
勿論、二組の男女が結ばれるとの王道は押さえつつも、
先に述べた幾つかの社会問題も盛り込む構造。
これは好き好きと思うが、このタイプは
頭を空っぽにして楽しめる作りの方が個人的には好き。
もっとも賞を獲ったり話題性を盛り上げるには、
社会課題を取り込んだ方が優位だろうが。
ダンスもラテン系の振り付けは特異だし、個人の力量よりも
群舞で魅せるシーンが多く、やや期待外れ。
ただ、やはり、中南米からの移民のコミュニティーを扱った
《ウエスト・サイド物語》も一部では似たようなトーンだったかしら。
特に《America》を唄う場面では。
科白よりも歌唱が、しかも韻の踏み方が特徴的な歌詞と楽曲が多いのは
他方で高評価。
大本の舞台は2005年が初演と聞いているので
劇中の停電は、その二年前にあった「北アメリカ大停電」のことだろうか。
随分と効果的なエピソードとして効いているのだが
8月14日の酷暑は
同じ気温でも、主人公たちの本当の故郷であるカリブ海諸国とは
また違った感じ方なのだろう。
暗闇の後に光明が訪れるとの流れは
ハッピーエンドを予感させる巧い造りではある。
評価は、☆五点満点で☆☆☆★。
直近では舞台を観ることもとんとご無沙汰だが、
本作は生で体験してみたいと思ったのも事実。