封切り三日目。
席数127の【シアター2】は満員の盛況。
『タランティーノ』は何をしたいんだろうと
三時間の長尺の中に身を置きながら漫然と思いを巡らす。
予告編で『シャロン・テート』が出て来た時から
『チャールズ・マンソン』等による惨殺事件が盛り込まるるのだろう
もっともレイティング指定が「PG12」であれば
それほどの凄惨さはない表現だろうとも予想していた。
物語は落ち目のハリウッドスター『リック・ダルトン(レオナルド・ディカプリオ)』と
彼のボディダブルのスタントマン『クリフ・ブース(ブラッド・ピット)』を主軸に展開する。
『リック』は架空の人物ではあるものの、現実の幾人かの俳優の
複合人格とも取れるエピソードが多々。
加えて『ロマン・ポランスキー』『スティーブ・マックイーン』『ブルース・リー』と言った
実在の人物も大挙して登場し、監督の過去作同様、
その時代の知識があればあるほど楽しめる内容となっている。
60年代後半のハリウッドのスタジオを舞台に
そこでの西部劇の撮影エピソードがかなりの時間を割き挟み込まれる。
でも『ジャンゴ 繋がれざる者』や『ヘイトフル・エイト』で
もう十分にやり切ったんじゃね?まだ満足してないの?などと考え、
お話がなかなかに進行しないことに怪訝さも覚える。
更には本作の為にわざわざ撮影されたムービーも幾つか挿入され
随分と手間と金が掛かっているな、と。
それは往時のハリウッドのリアルな再現性も同様で、
目抜き通りを走る車は何れもが懐かしいスタイル。
これほどを揃えるのに、どれだけの労力を割いたかと
驚嘆をしつつも、このあと一体どうやって落とし前を付けるのかと
首を傾げながらスクリーンを注視する。
しかし、ややの冗長さも感じられる前~中盤部に比し
終盤で事態は突如急を告げる。
僅かに半日の描写にカウントダウンのテロップを表示し、
そこでの出来事こそが描きたかった核心なのを理解する。
『タランティーノ』が望むあらまほしき世界を創り出すことが
要諦だったのだと。
なるほど、二人で一人の人物との二重性の設定そのものが
カギだったのか。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。
監督の過去作をコラージュしながらも
古き懐かしい時代のハリウッドにオマージュを捧げた一本。
その時代に生きて、本作に出て来た人々を自在に動かし
彼は映画を撮りたかったのだろう、勿論
叶わぬ望みではあるけれど。