封切り七日目。
席数89の【シアター8】は一席置きの案内なので
実質45席も、満員の盛況。
いくら「109シネマズの日」とは言え
平日の昼間でこれは凄い。
原作はおそらく、ひと夏を経て成長する少女を描いた
ジュブナイル。
それを大人の鑑賞に堪えうる一本に昇華させた『藤井道人』は
〔新聞記者〕に引き続きなかなかにノっている。
ただ物語を構成する要素はかなり有りがち。
継母に子供ができ、自分の居場所がなくなってしまうと不安になったり
或いは、時代を感じさせる学校の裏掲示板でバッシングされたり、
隣家の年上の幼馴染に仄かな恋心を抱いたりと
揺れ動く主人公。
ただそこに、トリックスターとしての『星ばあ』を絡ませることで
サスペンスに近い要素をスパイス的に付加し、物語りに厚みを出している。
とりわけ、対人的にやや冷めた目を持つ『つばめ』が、
他人に対して何かしてあげたいと変わって行く一連のエピソードは
ほのぼのと温かい。
結末はある意味想定通りも、胸がきゅっとうずくこと請け合いで。
妖精的な存在の(それにしては薹が立っているが・・・・)浮遊感もきちっと表現しながら、
ちょっと意地悪でそのくせ情に厚く、自身の葛藤も抱えている
『星ばあ』を演じた『桃井かおり』が練達の出来。
もはや老齢に差し掛かりながらも、デビュー時から続くアンニュイさも
しっかり感じさせつつ。
しかしわけても素晴らしいのは主人公の『つばめ』役の『清原果耶』。
元々「NHK」で放送された〔螢草 菜々の剣〕をチラ見していたので
できる女優さんとの認識はあったものの、
本作では台詞回しよりも表情での表現が印象的。
些細なことで猫の目のようにくるくると変わる愛くるしさ。
黙っているシーンこそが真骨頂にも思えるほど。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。
エンドクレジットを見ていたら、
バックに流れる歌も彼女によるものなのね。
作詞・作曲は『Cocco』となっていたけど、
その巧さに驚いてしまった。