封切り二日目。
席数118の【シアター3】の入りは六割ほど。
原作は1956年に発表されたSFの古典にして名著。
日本での海外SF小説のランキングでは
必ずと言っていいほど上位に位置付けられる。
何故に今まで映画化されてなかったんだろうと不思議に思うが、
かなりジュブナイル的なテイストがそれを妨げていたのかもしれない。
SFの設定を纏いながらも、ミステリー的な要素も色濃く打ち出し、
しかし根底にあるのはラブロマンス。
演じ手も勿論だが、公開される時代、受け入れる観客の側の雰囲気と、
三位が一体となって初めて成立する作品。
その意味ではイマイマの時勢もあり、
かなり好意的に評価をしてしまう。
過去に戻って未来を変える、
ある時点に同一人物が複数存在する、との
以降も度々取り上げられることになるタイムパラドクスの右代表を
仕掛けとしてしれっと取り込み
物語りの鍵として展開する。
そしてここでのキモは
並行世界など存在せず、時間はループするとの概念。
話中ではさらっとふれられるのみも、かなり重要な要素。
巷間言われている様に、
プロットも含めて、なるほど
幾つかのエピソードは〔BTTF〕がいただいているなと思う。
もっともそれは、本作の作り手側がそのことを認識した上で、
意図的に似せたシーンとして挿入した結果
余計にそう思わせるのかもしれない。
ハニートラップに引っ掛かり、
絶望の果ての選択がコールドスリープとはやや安直も、
意外とこれが、後々の複数の仕掛けに効いて来る絶妙の小道具。
主演の二人の良さは当然のこととして
主人公を助ける存在のアンドロイド『PETE/ピート(藤木直人)』がはまり役。
硬質な表情と所作の中に真面目なのか冗談なのかが分からない科白を発しながら
文字通り八面六臂の活躍を見せる。
ただ、ヒューマノイドロボットが汎用化されているとの設定では
行き交う、或いは応対する多く登場者がそれであり、
ちょっとの場面でも、いかにもな科白の発し方や動きが求められ
隅々にまで肌理細やかな配慮が必要だったろうと
制作サイドの姿勢にも感心する。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。
『山﨑賢人』も珍しく同年代を演じ、
研究一本でやや世間ずれした青年役は板に付いている。
が、やはり目を惹くのは撮影時にリアルJKだった
『清原果耶』の出来。
幼馴染ではあるものの十も歳が離れた『宗一郎』へ寄せる想いは
見ていて切なくなるほど、
透明感があり幼さが残る表現が極めて秀逸。