封切り初日。
席数132の【シアター6】は半分での案内なので実質66席。
その八割ほどは埋まっている印象。
DVの激しい恋人から策を巡らして逃げ出したは良いものの、
件の男が「透明人間」になり、主人公をじわじわと追い詰める。
プロットは至極シンプル。
原案は何度も映画化されている『H・G・ウェルズ』の〔透明人間〕。
それを現代風な味付けをし、ホラーの要素も加味しながら
非常に出来の良い一本に仕立てている。
『ケヴィン・ベーコン』がやはり「透明人間」を演じた作品とは段違いの面白さ。
だって〔インビジブル〕の主人公が真っ先にする行為は
覗きとかなんだから、全くの笑止。
透明人間って、便利なようで不便だよね、だって
服を着られなかったら冬は寒いし、
いったい移動はどうするの?
それにモノを食べた時って異物が体内に入るんだから
透明にならなくね?等の疑問は当然わき、
それを上手くすり抜ける仕掛けを用意するか、または
スルーして物語を組み立てるかは制作サイドの腕の見せ所。
ちなみに最後の疑問については
『H・F・セイント』が〔透明人間の告白〕で一つの解を出している。
それが本作ではすべてを丸っと収める
今風な仕組みが用意され、
なるほどこれなら汎用的だし、ラストのシークエンスへの
繋ぎもばっちりな素晴らしい工夫と感心。
もっとも、主な見せ所は主人公の『セシリア(エリザベス・モス )』が
「透明人間」にじわりじわりと追い詰めらる描写にあり。
〔ドラゴンボール〕なら気配で察するところも、
そんな能力は普通に持ち合わせていない凡人。
不審さを感じても、その原因が何であるのかの検討がつかぬことで
先ず本人が疑心暗鬼に落ち入る。
次第に元恋人の犯行との確信に変わるも、証明する手段は無く、
周囲には信用されず、おまけに何時襲われるかわからないシチュエーションは本当に怖い。
ちょっとした音にさえ神経をすり減らしびくつき、
前の画面と何か変わったところはないかと、
観客の側も目を凝らす。
見る側にはだれの仕業か判っていても精神的には相当にキツく、
通常作品の倍も疲労するシークエンスの数々。
また「透明人間」が恨みをつのらせながらも
主人公の肉体には決定的なダメージを与えないそれなりの理由も
ちゃんと用意される。
それを逆手に取り、狂人とみなされながらも
『セシリア』は反撃の爪を砥ぐ。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。
監督の『リー・ワネル』が〔ソウ〕シリーズの
脚本/製作総指揮/(出演)だけあって、人を怖がらせる表現はお手の物。
日常の何気ないことから始まり、次第にエスカレーションする意趣返しの数々。
思い付く人間は底意地が結構、悪いのかもしれない。